Home 受講生の感想レポート 親や指導者が学ぶこと。周囲を豊かにする心理学
親や指導者が学ぶこと。周囲を豊かにする心理学

大阪校  三好 範和さん(42歳 男性)


~子供達が「幸せ」になるために~

日本メンタルヘルス協会の講座を受講するきっかけから記したいと思います。

私は、幼いころから「野球」をやってきました。6歳年上の兄が甲子園球児であり、当然私も甲子園を目指して幼稚園から高校生まで野球をやってきました。夢破れ、甲子園には出場できませんでしたが、「野球」を通して多くの人たちと出会い、様々な生き様を見せていただき、男としての充実した生き方を学んできました。23歳で結婚し、待望の息子が生まれ、小学校5年生より「野球」を始めさせました。そして中学生になり部活ではなく硬式野球クラブに入部させました。まさに、親の私が息子へ「野球」というレールを引いたわけです。当時の私はこのレールが息子にとって最善の道であると、疑う余地もありませんでした。息子は中学の3年間、辛く厳しい練習に耐え、精神的にも肉体的にも成長してくれました。そして、いよいよ甲子園を目指して野球の名門校に入学し、私が果たすことができなかった『甲子園』をめざしてがんばってくれることを信じて疑わなかったのです。

しかしながら、高校入学後、名門野球部に入部し日々挑戦の毎日を送ってくれるはずの息子が、1年の夏前に弱音を吐き出し野球から逃げるようになりました。私には信じられない程、ショックでした。中学時代の硬式野球クラブの監督、高校の野球部の監督、他にもたくさんの方々から息子に叱咤激励の言葉や指導を頂きましたが、結局息子は高校の野球部を辞める事になってしまいました。野球の練習から逃げ、家出をし、時には私とつかみ合いの喧嘩をし、辞めるに至るまでの数ヶ月間は息子も私も右往左往し、時には辞める理由を見つめる事もできず、人のせいにしようとしたこともありました。

そして、一度目指した目標を途中で挫折してしまうことに、親としてどうしても許せない想いが先立ち、息子の本当の気持ちに気付くことが出来ませんでした。

ある日、学校に行っているはずの息子からメール届きました。「おじいちゃんのお墓の前にいる」というのです。我が家は姫路で、お墓は岡山県津山市です。私は車を飛ばして息子を迎えに行きました。墓前にうつむいて座っている息子がいました。高校生にもなってひとり泣きじゃくっている息子を見たとき、今までの息子に対する想いや教育の理念のようなものが崩れ去りました。


私が息子のためにと思ってやってきたことは、本当は息子のためじゃなく私自身の満足のため、私自身の見栄ではなかったのかと気付かされました。私が果たす事ができなかった『甲子園』を息子の人生に無理やり背負わせてしまっていたのではないかと。

息子本人に、また息子を指導していただいた多くの方々にとんでもないことをしてしまったと、このときにようやく気づいたのです。
そして、息子と一緒に野球部のグラウンドに行き退部を申し出た後、息子と二人で向き合って話をしました。
「俺のお前に対する教育が間違っていた。お前は16歳になったけれども、0歳からもう一度俺とやり直そうや」と・・・。

いま、ようやく息子は3歳になりました。そして私は3歳の息子を育てているオヤジです。

そんな時、息子が硬式野球クラブでお世話になった監督から、野球チームのスタッフとしての打診が入りました。私が犯した過ちは、多くの野球少年をもつ親が犯しやすい過ちだと思っています。この経験を生かしお手伝いできるならと思いスタッフになることを承諾し、日々奮闘しています。

そしてこの監督の紹介で日本メンタルヘルス協会に出会えました。最初の体験セミナーでの阪神淡路大震災時の暴走族の話、難病を抱えた少年の生きる話、そして基礎コース前編の「離別感(相手と自分は違う存在であると認めること)」と「母子一体感(子どもがお母さんは自分のことを言わなくても分かってくれる、自分の思い通りに動いてくれるはずと期待してしまう、甘えや依存心のこと)」、聴き方の話を聞いたときに、まさしく目から鱗状態でした。「Iメッセージ(自分の気持ちを素直に伝えるメッセージ)」はまさしく中学生を指導し関わっていく指導者は、しっかり学ぶべきだと感じました。多くの親・指導者は子供達の想いをわかったつもりになり、聴こうとはしていないのではないでしょうか。そして、そのことにすら気付いていない親・指導者も多いと思います。私がそうであったように・・・。

少なくとも、多感な年代の子供達と接する我々が心理学という学問を学び、いくつかの手法を用いて子供達の心の中の叫びを聴くことが出来れば、子供達が挫折してしまう前に心の中を軽くすることができるのではないかと思いました。

また、後編講座のゲシュタルト療法と森田療法から学んだ「あるがままの自分」を認めつつ、価値観が対立した時の解決方法であるブレーンストーミング法などを子供達の指導に取り入れることができれば、学校では教わらない本当の意味での教育が出来るのではないかと感じました。自分自身の失敗した経験と学び始めた「心理学」を基に、子供達やその親と関わっていくことが出来れば、素晴らしい指導が出来るはずと確信しています。



今、私がスタッフとして所属している野球チームは、姫路の硬式野球クラブチームです。その指導者は日本メンタルヘルス協会の研究コースまで受講された方です。その方と一緒に姫路の田舎の野球チームから「野球」というツールを通じて、子供達の育成・教育に関わっていきたいと思っています。

現代の小・中学生は親の期待にこたえることを知らず知らずのうちに要求され、承認欲求の塊になっているのでは・・・と強く感じています。また、中学生においては精神的低年齢化も進んでいるようにも思えます。自己信頼感を持てず、周りの人が気になり、人と同じことをすることで安心を得る。「健全な大人」になろうとしない。これはまさしく私自身が失敗した親の間違った「母子一体感」からくるものだと思っています。

私は、子供に「野球」をさせている親は、教育熱心な方々か、全く無関心な方々か両極端ではないかと感じています。子供のプレーの一挙手一投足に大きな声援を送ったり、過度な心配をしたりする。子供が失敗したり怒られたりしようものなら、あたかも自分が失敗したかのように落ち込んだりする。反対に「すべて指導者にお任せしています」と無関心であったり・・・。本当の「離別感」をもって接する親は稀ではないでしょうか。
おそらく、この事にも気づいていない親がほとんどだと思います。(何度も言いますが、私自身がそうでした。)

子供達は、野球が上手くなろう、甲子園を目指そうと、指導者へ絶対的な信頼を置きます。子供達への指導と平行して、野球をする子供を持つ親として、そして大人としてのあるべき姿を一緒に学んでいこうとするチーム組織ができればと思っています。

高校3年の3歳の息子は、いま進路の問題に直面しています。幼いころより消防士になりたかったようで、自分自身で決めた夢へ向かって挑戦しています。ニュースでも報じられた大きな被害が出た兵庫県佐用町での水害ボランティアに一人で参加し、改めて消防士になる決心を固めたようです。出直し育児3年目のオヤジとしては、ここはグッと黙って心の中でエールを送っています。

日本メンタルヘルス協会で心理学を学び、少しは成長したであろう自分を嬉しく思います。また「有縁を度す」という教えに従い、周囲を豊かにしていくことを心がけていきたいと思っています。

 

~受講生のレポートより抜粋~
  紹介スタッフ:吉原

父親ってこんな気持ちで子供と関わってるんだ・・・・。
私が、まず一番最初に素直に感じた事です。
私の弟も小学校から野球をしていました。
幸い弟は自分でやりたくて始めたスポーツだったので、今も社会人野球チームに入って野球を続けています。弟にとっては、野球は自分が輝ける場所になっているようです。
それでも、三好さんと息子さんのように、父親と弟は掴み合いの喧嘩をした事もあったし、
母親を通じてしか話さない時もありました。
今思えば、長男として生まれた弟に対する父親の期待への反発だったかもしれません。

子供達の幸せを願わない親はいないと思います。
でも、その幸せが本当に子供達が望んでいる幸せなのかどうかは・・・・。
子供達は親から愛してもらいたくて、必死に親の期待に沿えるようにがんばると聞きます。
三好さんは息子さんのSOSによって、息子さんにとって何が幸せなのかを気付かされましたが、
今もどこかで必死にがんばっている子供達も多いのかもしれません。

私の知人に孤児院や乳児院でボランティア活動をしている人がいます。
以前は親を亡くした子供達がほとんどだったようですが、今は親がちゃんといる子供達が多いそうです。
育児放棄や虐待が理由です。それでもその子供達は親を決して悪く言わないそうです。
月に1度程しぶしぶ迎えに来る無関心な親でも、
自分達の唯一の親だという事を分かっているのだと思います。
愛されたくて笑顔いっぱいで待っているそうです。

三好さんは息子さんのSOSが出るまでの子育てを“過ち”とおっしゃっていましたが、
決して息子さんに対して無関心だったのではなく、一生懸命息子さんと関わっていらっしゃったと思います。だからこそ、ご自身の夢を息子さんに託されたのではないでしょうか。

でも、三好さんの夢と息子さんの夢は一緒ではなかった。
息子さんに野球をやらせていたのは自己満足に過ぎなかった・・・
三好さん自身もレポートに書かれていますが、「子どものために」と思ってやっていることが、
実は親の自己満足に過ぎない・・・
親御さん自身がそのことに気づくのは、簡単なことではないと思います。

三好さんは息子さんのSOSを見逃さず、息子さんや自分自身と向き合うことで、
衛藤先生が講座でいつも話されている「幸せはその人の中にある」という事を
改めて実感されたのではないでしょうか。
三好さんと息子さんのようにお互いに成長していける親子関係は素晴らしいなぁ、と心から思いました。



「野球」を通して一人でも多くの子供達が幸せになる事を私も願っています。
三好さんが今心の中で息子さんにエールを送っているように、
私も、いつも心の中で三好さんを応援しています!!