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日常の中の句読点

大阪校  永井 ちなつさん(31歳 女性)


 要領よく、賢く生きたい。ついこの間までそう思っていた。自分のことが好きになれなかった。

 一つの事に打ち込むと、驚く程のチカラが出てくる。友達にはそのチカラはすごいといつも言われる。ただ、それは一方通行だと感じることの方が圧倒的に多かった。
 走っている時の自分はとても生き生きしている。ただ、走り抜けた後は心の中に空洞ができることが多い。そして、自己満足だったのだと思い知らされる。


 何事もきちんとしたい。何事も理想的な筋書き通りに進めたい。だから、周りが動かないと率先して動く。その行動力に感心すると言われる。自分で纏める力があるわけではないことは十分わかっている。自分の思う通りに進めたいという自己中心的、わがままな部分があることを隠して、さも行動力のある人を演じてしてしまう。

 

 誰に対してもいい顔をする。実際、誰にでも分け隔てなく接していて偉いねと言われる。
 ただ、私はそういう人だと思わるより、そういう人だと思われたくないという気持ちの方が圧倒的に強い。自分の好きになれない部分は数えればきりがない。できるだけそんな部分は隠して、好きな自分だけを見てもらえるようにしていた。自然と好きな自分で過ごせる時もあるし、好きになれない自分が前面に出てしまう時もある。そういう時は、ブレーキがきかなくなってしまう。

 

 そして、きっと自分のことを良く思っていないに違いないと思う。

 

 想像力が豊かだと思う。それが悪い想像力も掻き立てる。自分が好きになれない自分を出してしまい、相手にもそう思われていると感じた時、リカバリーする術を持ち合わせていない。

 

 もういいか。この人にはそう思われて仕方がないような行動をしてしまった。こんな風に思われてしまっただろうな。けど、諦めよう。
悪い想像力をフルに働かせて、そして自分を諦める。自分のことをよく思ってくれる人のそばで、よい子のままでいたらいい。そう思っていた。

 

 そんな自分が好きになれなかった。

 

 私には、父、母、姉がいる。
 姉は私とは正反対の性格で、まさに要領よく、賢く生きている人だ。
 勿論、そこには努力があることは十分理解しているし、今までそういう姿も沢山見てきた。
 勉強ができて、明るく、人を惹きつける魅力のある人だ。仕事もでき、会社の人たちからも信頼され、可愛がられている。友達も多くて、交友範囲が広い。広く浅くではなく、みんなから慕われている。行動力もあり、家族も姉がすることにはあまり口出しをしないし安心して見守っている。

 

 でも、私は違う。日本メンタルヘルス協会に通うきっかけとなったのは、姉からの勧めだった。「心理学とか興味ある?」
 「無いわ。」
 「どうせ暇なんやし、行ってみたら?」
 「遠いし、いいわ・・・。」

 

 どうせ暇なのだからというのは、姉からよく言われるし、実際否定はできない毎日を過ごしていたので、そんな言い方をされても特にストレスには感じない。いつものこと。
 一度は興味が無いということで見送った。ただ、いつも姉と行動を共にすることでの収穫は大きかった。姉が言うことはいつも的を射ていて、それに従うと間違いはなかった。
 自分でゼロから考えて決めたことは結果的に中途半端で終わることが殆どだった。

 

 だから、今回も一度は見送ったけれど、また姉の勧めに従ってみようと思った。やはりはじめはいつもの自分が出てしまった。初対面の人に対して、こういうふうに思われないように振舞おう。相手が自分のことを良く思ってくれていると感じるとほっと胸を撫で下ろす。

 

 楽しい時間が少しでも多ければ、自分のことを良く思ってくれる人が周りに少しでも増えれば、それで安心。講座が終わった後、話しかけてくれた人がいた。
 「どうしてメンタルの講座を受ようと思ったの?」
 「姉が受講していて、勧めてくれたんです。」「あと、自分が好きになれないから。」
 なぜその時、その人に素直に話せたのかはよくわからない。ただ、この人には話してもいいのだと思った。
 そして、、、「こんなに素敵なんだから、わかってくれる人もいるよ。みんなに好かれよう、良く思われようなんてしなくていいんだよ。」

 

 特別なことを言われたわけではないのかもしれない。でも、肩の力がすっと抜けたのを覚えている。涙が止まらなかった。講座の中での心に吸い付くような言葉。先生方、スタッフのみなさん、一緒に講座を受けるたくさんの方たち。自分のことをまっすぐ見てくれる。見透かされているような気にもなったけれど、今では見透かされたいと思うようになった。

 

 「相手が自分のことをどういうふうに思っても、人それぞれの感じ方があるんだから、あなたはあなたのままでいいんだよ。」
 これもメンタルで出会った人から言われた言葉。

 

 今まで自分を好きになれず、心ではそんな自分を認めているけど、頭では認めたくなかった自分。そんな自分を受け入れても良いかなと思えるようになってきた。
 自分のもつ想像力を、駄目な自分も含めて良い方向に持っていけるようになった。
 それは、自分一人で気持ちを切り替る事ができるようになったわけではなく、メンタルで出会った人たちと話していく中で自然と心が動くようになった。

 

 人は人と関わることによって、如何様にも成長する。いつの間にか、自分がすごくいい顔をしているのに気がついた。
 そして今、私の周りには素敵な人がたくさんいる。たくさんの人の優しさ、あたたかさ、寂しさ、人生観、許し合う心。すべてが大切で、零れ落ちないように、心でしっかりと受け止める。

 

 皆の顔を見て、今ある幸せな時間を愛おしく思うようになった。皆の言葉ひとつひとつがあたたかい。
 自分らしく、ありのままでいられる場所を見つけた。
 I love you, because you are you...いつも好きになれず、今まで同じことを繰り返してしまった自分。それも決して無駄なことではなく、今の自分を支えてくれている。もしかすると、これからまた同じようなことが起きるかもしれない。
 ただ、その時私はきっと今までとは全く違った気持ちで清々しくその出来事を受け入れられる気がする。きっと受け入れられる。

 

 今、私が生きている時間は、誰かにとっては生きたくても生きることができなかった時間。空気のようにそこに在ることが当たり前で感謝どころか意識すらしなかった。
 どんな日もかけがえのない一日で、「今日」ほど大切な一日はないはずなのに、気づけば日々過ぎていた。
 晴れた心で好し、雨での好し、風で好し。そんな思いで毎日を大切に過ごすこと。
 大切にしたいと心から思う。そして、日々自分が受け取るもの、家族、友人、周りにいてくれる人たちにお返しをしていきたいと思う。

 

 誰かを想って花を飾る。誰かを想って料理を作る。誰かを想って音楽を選ぶ。ありがとうと言う。
 誰かを想う純粋な気持ち。その言葉が空気を伝う。
 私たちは毎日、小さな幸せの波を発したり受けたりして人とつながっているのだと思う。

 

 出会えたことに感謝。そして、一緒にいられること、今を過ごせることにありがとう。慌ただしく転がるように過ぎていく日常の中に、小さな「句読点」をつけてみる。

 

 歩く速度を変えてみる。立ち止まってみる。いつも見ている風景の中に視線の先をかえてみる。
 あえて価値観をずらして考えてみる。
 旅に出たり、大きな買い物をしたり、そんな大きな深呼吸が度々できればよいけれど、日々の中の、一見無意味とも思いがちな ちょっとしたことをかえてみるだけでも、それが改行のきっかけになるのかもしれない。
 

 できることが少ない日は、少なく何かをしてみる。呼吸のリズムに変化をつける。
 生活に小さな「句読点」をつけながら、色々なことを感じ、受け入れ過ごしていきたいと思う。
 そんな一日一日を大切に過ごしていくことが、やがては年年是好日となるように。

 

~受講生のレポートより抜粋~
  紹介スタッフ:吉原

 先日、永井さんは研究コースの受講を終え、身近な方のカウンセラーとしてのスタートを迎えられました。。
 キラキラした笑顔の中に、少しはにかんだような表情がとっても可愛らしい方です。
 その場の空気が柔らかくなるような、可憐なお花のような存在が印象的でした。

 

 でも、そんな永井さんがご自身を好きではなかった過去があるという事を今回レポートを読ませて頂いてはじめて知りました。

 

 私も永井さんと同じように、ある言葉でチカラが抜けて、涙が止まらなかった経験があります。
 渡英する前、「成長して帰ってこれるかな・・・。」とつぶやいた私に、
 「そのまま帰っておいで、そのままの君が帰ってくるのを待ってるよ。」
と言ってくれた人がいました。

 

 まさしく私にとっては、I love you, because you are you..丸ごと受け止められた気持ちでした。
 心を固い殻で覆い、いつも元気なふりをしていた私でしたが、殻の中の弱い心も理解し受け止めてくれたような感覚。
 涙が溢れました。溢れるってこういう事なんだって感じました。

 

 好きになれない部分も自分の一部、そしてそこを含めた私を受け止めてくれる人はいる。
 自信に繋がりました。でも、その時はまだ私が自分自身を認めていませんでした。
 自分らしく、ありのままに生きることを望みながら、ありのままの姿を見せるのが怖かった。。。

 

 以前の永井さんのように、笑顔で全速力で走り続け、走り切った後は充実感ではなく、心にぽっかり穴があく。そんな時にメンタルに出会い、永井さんの言う「生活に句読点をつける」ことができるようになりました。
 

 メンタルの講座を受講すること自体が「句読点」でした。慌ただしく過ぎていく毎日の中に「句読点」をつける大切さを思い出させてくれた、永井さんのレポートに感謝いたします。素敵なレポートありがとうございました!