Home 受講生の感想レポート 妻が、元気になりました! ~自殺未遂で苦しんでいたあの日を超えて~
妻が、元気になりました! ~自殺未遂で苦しんでいたあの日を超えて~

東京校  並木 悟史さん(32歳 男性)


妻がベランダから飛び降りようとしました。

 妻の自殺未遂。

 私はこれからどうしたら良いのかわからず
 何も考えることができず
 自分の心がボロボロと壊れていく音が頭の中で響いていました。

 妻はただただ、泣くばかりでした。

 私と妻が入籍した年、妻は会社で異動の辞令を受けました。
 その異動先で、世間で言うお局様に、結婚したばかりという事に対するひがみに会い、妻は攻撃の標的になりました。さらにそのお局様が発する、他人を罵倒することばが飛び交う職場に居続けたことにより、まるで自分が罵られているように感じてしまった妻は、日に日に元気を失い、心を患っていきました。そのお局様の「口撃」は酷く、他の営業所にいる社員の間でも噂にあがるほど聞くに堪えなかった、と妻と同じ会社で働いていた妻の兄は話していました。

 同じ時期に私も異動を経験しました。
 異動したのは8人中、4人がうつ病患者という部門でした。

当時、自分の所属する会社は流行りの品質問題に揺れており、
社内外を問わずにクレームの嵐がその部門へ集中したことが、この部門を患わせた原因でした。
 コールセンターでないにも関わらず、朝から晩まで電話がなり続け、受話器からは怒声が響いていました。
 さらに私は掛け持ちで、数ヶ月間限定で山奥の別会社の在庫置き場に転籍し、
在庫置き場で働いている人達の人員整理を行う仕事に就きました。
 その職場は、外国人が多く、コミュニケーションをとることすらままならない所でした。
 そのせいもあってか、新しい職場と苦しい仕事に疲れていた私は帰宅後に妻の異変に気づくことができませんでした。
 妻の話を聴いてあげることができませんでした。


 ストレスを溜め込んだ私と妻は家でいつもぶつかりました。

 毎日エスカレートする口喧嘩。
 普段使わないような酷いことばの暴力で互いを傷つけあう。
 それはまさしく「自分は正しい」と思いながらぶつかり合う、価値観の押しつけあいでした。
 互いに引かず、受け容れることもなく、聴く姿勢もありませんでした。

 そんな中で私が突きつけた言葉は、
 「そんなに辛いなら会社辞めちゃえばいいじゃん。」
 今考えると、ただ話を聴いて欲しかっただけの妻に対する横暴な私の解決策でした。

 やがて妻は私の言うとおりに会社を辞め、
 人に会うことが少なくなり
 人に会うことが恐怖になり
 家から出ることが少なくなり
 家から出なくなり
 リビングから出られなくなり
 記憶が鈍くなり
 やがてテレビを見ているだけの小さな丸い背中になっていきました。

 妻はうつ病、そして不安障害と診断されました。

 当時、私が知っているうつ病の知識といったら
 「ガンバレ!と言ってはいけない」ということくらいでした。
 今は年間3万人もの人が自殺する時代です。
 1万人が交通事故で亡くなった時代に「これは交通戦争だ!」と政府が謳っていましたが
 その3倍もの人が尊い命を自ら絶ってしまう時代です。
 それにも関わらず、うつ病などの心の病に関する知識が全く無かった自分を恥ずかしく思いました。

 会社で働く同僚も同じでした。
 心に悩みを抱えている人達にどのように接していいかわからない。
 だからまるで腫れ物に触るかのように心に悩みを抱える人を扱ってしまう。
 心の悩みを抱える人はそんな扱いをされることで、
 より強い孤独を感じるようになり、さらに病状を悪化させていく。


 同じように、
 私は妻にどのように接したらよいのかわからず、
 考え、悩み、苦しみました。

 妻は心療内科に通い、処方された薬を飲み続けましたが回復の兆しはほとんど見られず、また私もその心労からか不眠症に悩み、1日に1時間も眠れなくなりました。

 心の病に関する様々な知識を勉強し、
セミナーに参加し、多くの人に相談しましたが効果が得られず、悩み続ける日々でした。

 妻の自殺未遂もこの頃でした。
 マンションの11階から飛び降りようと柵を乗り越えようとした妻の姿は
私にとってアメリカの9.11事件と同じくらい、
現実とは信じられず、大きなショックを受けた出来事でした。
 抜け出せない苦しみの迷宮の中、
つくばエクスプレスのホームで
「このまま電車に飛び込んだら楽になるなぁ…」と、
ただ一度、当たり前のように自殺を考えてしまった瞬間もありました。

 そんなワラをも掴む思いのとき、
日本メンタルヘルス協会の衛藤先生と出会いました。

 凄くお洒落でビジュアルも抜群なのですが、かえってそれが疑念にさえなり、さらに教室に辿り着くまでの道のりで出会ったボランティアの方々の笑顔ですら怪しく感じました。当時の私は、もう人を信じることさえできなくなっていたのかもしれません。

 しかし、
その日から私の心の時代は、新しい元年を迎えました。

 闇の中に光が差し込んだような
時の歯車にがっちりと自分が噛み合ったような感覚でした。
 後に衛藤先生がブラックジャック好きだと知ったのですが
そのときは

 「間 黒男(はざま くろお:ブラックジャックの本名)」だ…!  心理学の黒男がいた…!!
と驚いたものです。



 それからの講習は反省の連続と気づきの日々でした。

 思えば、私は妻に
 「病院へ一緒に行こう」
 「一度、実家に戻ってみようか」
と言うだけでした。

 私は病気と向かいあっていましたが、妻とは向かい合っていませんでした。
 妻と向かいあい、抱きしめて、背中を撫でて、「いつも一緒にいてくれてありがとう」と、
毎日を感謝のⅠメッセージ(感謝のメッセージ)で埋め尽くしていたのなら
 妻はどんなに優しいままでいられただろう。
 妻はあんなに苦しい想いをしなかっただろう。

 そして
自分が妻の病気を治すためと思って発言していた解決策が
どんなに横暴であったかを知り、
申し訳なくて、申し訳なくて、風呂場でシャワーを浴びながら泣いた夜もありました。

 でもそんな私にもファインプレーがありました。

 それは「妻とふたりで一緒に」心理学を学んだことです。
ひとつのことばの受け取り方はお互い全く違い、
一緒に講習を受けたことで異なる視点からの気づきが多くありました。
 また共通の話題ができることで会話が増え、
 学ぶことで自分が成長していることを感じ取れました。
 たくさんの夫婦やカップルの話をふたりで多面的に聴くことで
相手が悩みを受け容れるための気づきを与えるきっかけを掴めることがありました。

 私達夫婦は、どんな心理テストや統計学を見ても
いつも正反対の精神的傾向性であると結果が出ます。
 昔の私達ならば「私達は合わない」と言って途方に暮れるだけで終わっていましたが
今は私と妻とのコミュニケーション・ギャップが発生するたびに笑い合い、話し合い、
「毎日コミュニケーション・ギャップを勉強させてくれてありがとう」という感謝の気持ちで満ちています。

 そして


 その先にあったのは

 心の病と闘う日々ではなく、
 心の病と一緒に暮らす日々でした。

 いつの間にか、毎日が幸せになりました。

 特にアルバート・エリスの論理療法の講座の中で
 『この世の中は、人それぞれの受け取り方で決まる』
つまり、受け止め方を変えることで
 『今見えている世界の風景ですら違って見える』
という考え方を学んでからは、物事の受け容れ方が変わり、
日進月歩の勢いで私と妻の毎日の生活は穏やかになっていきました。
 今の世界恐慌ですら、
 「こんな時代は滅多に味わうことができないから、人生の良い教育の機会だ。楽しもう。」
とさえ思えてしまいます。

 また
つい先日、妻は言いました。
 「今はあのお局様に感謝さえしているんだ。」
 その言葉を聴いて、本当にこの女性を妻に迎えることができて幸せだと思いました。
 世界はこんなに輝いていたんだ、と気づきました。

 妻が元気になりました。

 2008年10月4日、私と妻は、披露宴も2次会も無い、家族9人だけのささやかな形式でしたが、
ついに結婚式を挙げることができました。

 プロポーズから4年が経過していました。
 心の病気と向き合うため、度重なる式の延期がありました。
 偶然にも、基礎コース・後編の受講完了と同時でした。
 もう新婚ではありませんでしたが、
「新婚」から「心婚」になることができました。



 心の時代にふさわしい、新しいスタートができたと感じています。

 最近、Ⅰメッセージ(感謝のメッセージ)やアルバート・エリスの論理療法を私生活で実施しているうちに
会社でもプライベートでも人に相談されることが2倍に増えて、
人にしてあげられること(=話を聴くこと)が2乗に増えました。
 そのような出会いに感謝することはさらにその倍に増えたかもしれません。

 同時に人には言えない悩みを抱えている人がなんと多いことだろう、と感じました。
 私は所属する会社で新入社員の教育を承っているのですが、
次世代の若者達は様々な悩みを抱えています。
 会社の就業時間中だけは気が重くなってしまい、
会社が終わると社外では人が変わったようにセミナーや旅行に出掛ける「9時5時うつ病」から始まり、
両親のDVや統合失調症まで、あらゆる問題を抱えて生きていることを知りました。
 諸先輩方は子供の不登校に苦しみ、親の介護に悩んでいます。
 知り合いの夫婦は、お互いを想っているにも関わらず、不仲で離婚の危機です。

 今の私達にできることは話を聴くことです。
 しかも夫婦で異なる視点から話を聴くことができます。
 これからは夫婦で大切な人達に
講座で習ったライアル・ワトソンの「100匹目の猿現象※」のように
誰もが心の時代を豊かに生きられるようになることを信じて
たくさんの人と出会い、たくさんの人の話を聴き、
たくさんの人に感謝のメッセージを伝え続けていきたいです。

 ドンと生きたろ!


 ※100匹目の猿現象:猿の芋洗い現象が、宮崎県の幸島から、遠く離れた大分県の高崎山などに伝わった現象に基づき、同じようなことを考えている人の数がある臨界値を超えると、同じ現象が離れた場所にも及んでいくような現象のこと。

 

~受講生のレポートより抜粋~
  紹介スタッフ:乙川

現在、研究コースへ進み更に学びを深めておられる並木さん。

 奥様の病を治してあげたい、何とかしてあげたいがどう接していけばいいかわからない苦悩の日々。
 大切な人が変わっていく姿をみるのは、本当に辛いことだったと思います。

 メンタルで学んだことで、たくさんの気付きを得て、今までの自分の姿勢を反省し、
葛藤と苦悩するご自身を受け入れ、そして何よりも、病と向き合うのではなく、
奥様という一人の女性(人間)と向き合い、
心と心のつながりを深めながら、
一緒に乗り越えていかれる姿に感動しました。

 周りの環境や状況が何も変わらなくても、自分自身の受け止め方を変えるだけで、不幸だった日々が、幸せな日々になる。自分の世界が大きく変わる。抜け出せないと思える状況でも、
自分で変えていくことができるんですね。

 自分自身で解決できない問題は起こらない!
 どんな辛い出来事も自分を成長させてくれる、大切な出来事だと思います。
 私も一つひとつの出来事にしっかり向き合いながら、更に新しい自分へと成長していきたいです。