受講生の感想レポート

東京校基礎コース修了 野村ますみさん 47歳

壊れた「しあわせ」というメガネ

私の家庭は最も理想的で絵に描いたような幸せな家庭である。
夫婦仲も良く親子関係も何の問題もない。
素直な子供と優しい夫。
そして私は食生活や住環境を大切にしている良いお母さんだ。
何の疑いもなくずっとそう思っていたんです。
私にとっては我が家、家族が自慢で、こんな居心地の良い家庭があるなんて。
これは今までいろんな苦労を乗り越えて頑張ってきた神様からのご褒美なんだ・・。
私は何の疑いもなくそう思っていました。
子供の頃からずっとあこがれていた笑顔あふれる暖かい家庭。
確かに我が家のリビングは笑い声が多く会話も絶えなかったのは事実です。我が家が職人の家であることもあるし、私の友人などもよく来るのでとにかく我が家は人の出入りが多い家でした。
食事もいつもにぎやかで家族だけで静かに食事をするということは少なかったです。
そんな大家族のような家庭だったので、子供たちも人との関わりには慣れているし淋しいということはありえない。
私の一方方向の「しあわせ」というメガネにはその様にしか映らなかったのです。
私はとにかくいつも忙しく家に居れば電話と来客が多いというそんな日常でした。ある日、今日は夕方大急ぎで食事の支度をしたらすぐ出かけなければならない、そんな勢いで台所に立っていた時のことです。
後ろからトントンと息子に呼びかけられて、こう言われたんです。
「お母さんはみ~んなのお母さんだよねぇ」と。。。
その時息子は小学1年生でした。
その顔はニコニコの笑顔で・・・ 一瞬意味がわからず、突然何を言ってるんだろう・・と思ったのですが次の瞬間「そうよぉ。お母さんがいなくなると困る人がいっぱい居るの。はやとはよくわかってるねぇ」と笑顔で返したのです。
ちゃんと理解してくれてるんだなぁと嬉しく思いました。
なんてものわかりのいい子なんだと。。。それだけの会話だったのですが、なぜだかその時のことが心に残っていて、時々ふっと思い出すのです。
それはどんな時に思い出すのか今でもわかりませんが、その度に、えっ?またこれ?と不思議な気持ちになりながらも、いつもの様に忙しさにもみ消されて。
ふっと浮かんでは消え・・何年もその繰り返しでした。そしてとうとう「しあわせ」のメガネが壊れる時がきました。
笑顔に隠されたストレスが知らず知らずのうちに心や身体や環境にまで様々なゆがみをもたらしていたことに全く気付く芳もなかったのです。
まさか、こんなことになるなんて・・。
一つの出来事も受け入れられないうちになぜか次々と問題が発生してしまう。
事故、怪我、病気、借金、親3人の介護と、ふさぎこんでいる暇もないぐらい追い詰められるような生活になっていきました。
よりによってこんな時に何故こんな事が起きてしまうのか!と思いながらもどうにも防ぎようのない状態になっていくのです。
明日が恐ろしいとさえ思いました。心も身体ももうくたくたに疲れきっていて目の前のことで精一杯。
まるで油の切れた機械のようにギーギー身体が音を立てそう、それくらいくたくたになっていたのです。
歯の骨が溶けるほど噛みしめが強く、全身の緊張が強いため身体の痛みが増していく。
私が頑張らなきゃいけない、弱音を吐いちゃいけないと、頑張っていました。
家の中にもう笑顔はありませんでした。
こんなことになるとは夢にも思わなかった。
ところがそれは自分だけではなかったのです。高校に入学したが学校に行こうとすると体調が悪くなり息子は学校を休みがちになりました。
専門学校に通っている娘は大丈夫だと思っていたら実はこの時から眠れない、食欲がないなど悩んでいたらしいのです。
子供たちもすっかり心と身体のバランスを崩していたのです。
子供たちがどこにも相談できずに苦しんでいたことに私は全く気付いていなかったのです。息子が夜になると必ず「眠れない」と言ってくると、私はいつも、「ただの夜更かしだ」と怒ってしまう。
娘がだらだらしているのを「やる気がない」と責めてしまう。
子供の頃から絶対私を困らせることのない物静かな娘が、その時は様子が違っていた。
突然叫ぶように泣き崩れて大泣きしてしまったのです。
これまでこらえていた感情を吐き出すかのように目の前で泣いているのです。
頭では娘を抱きしめてあげたいと思っているのに私は驚いたまま呆然と立ちすくんでいて動けない。
どう声をかけていいのかわからない。混乱してしまいました。子供たちには苦労かけたくないと必死で頑張ってきたつもりだったのに。
私は子供たちの気持ちを全然わかってなかったのだ。
申し訳ないという気持ちと自分が情けないという気持ちで、他はなんにも考えられない。
いつもフル回転の頭の中は完全に止まっていました。
その時、いつもの記憶がまたふっと浮かんできたのです。
「お母さんはみ~んなのお母さんだよねぇ」。
1年生の時に息子に言われた言葉です。
ものすごくハッとした。なんで自分はこんなことに気付かなかったのか!この言葉の意味が何でわからなかったのか。
その時息子がどんなに寂しかったかと思うともう胸が引き裂かれそうでした。
体中の力が抜けて骨がバラバラに落ちていくような感じがしました。
何ひとつ気付いてあげられない、私はだめな母親だ・・。
なんてことだ・・。
子供たちへの愛おしい想いが溢れてきてもう涙が止まらない。
「私はみんなのお母さんじゃない!あなただけのお母さんだから!」と心の中で何度も何度も記憶の中の息子に叫んでいました。
ああ、あの時にそう言ってあげられたら。。。後悔ばかり。
子供たちに早く安心感を与えてあげたい。
そう強く思うのです。しかし状況は悪化する一方で、負の連鎖は止められない。
私も子供たちも体調がどんどん悪くなっていく。
周りからはお祓いしてもらった方がいいんじゃないかと言われてしまうぐらいでした。ある時、友人から日本メンタルヘルス協会の話を聞きました。
でももうお金もないし、夢も希望もわいてこない。
何かに興味関心を持つ元気もなくなっていたのです。
今更それを勉強したからって状況が変わるものでもないし。
今必要なこととは思えなかったのです。しばらくして私たち家族は住み慣れた我が家を出ることになり、家の貸り手も決まりました。
子供たちはそれぞれ一人暮らしを始めました。
引っ越してから数ヶ月が経ち、私はだいぶ今までとは違うものの見方考え方が出来るようになっていました。
何の気がねもない暮らしから、隣の話し声が聞こえる古いアパートに生活が変わって、感じることがたくさんあったのです。
家も家族も失ってしまったという気分で落ち込む日も度々ありましたが、だからこそ知った有難いこと。
家を出てから感謝できることが次々見つかっているのが嬉しいということもありました。ある日、日本メンタルヘルス協会について知りたくなってインターネットで検索し、体験ガイダンスを受講することになったのです。
衛藤先生のお話は、まるで自分の生活のケーススタディのようで衝撃的だったことを覚えています。
言ってはいけないことを言い、やってはいけないことばかりやってきた。
これまでの子供たちの気持ちを衛藤先生が代弁してくれているように聞こえたのです。私は以前自分は良い母親だと思っていました。
子供たちの気持ちを受け取らずに自分の理想を押し付けていたことにはっきりと気付くことが出来たのです。
子どもたちの中にあるのびやかな感性をもっと自由に出せたらどんなに良いだろうと思いました。
こうして私は日本メンタルヘルス協会に通うことになったのです。受講する度にどんどん心が軽くなっていく。
自分の生活の中の色々なことが明確になり考え方の引き出しが増えて自信がついてくる。
いつしか自分を許せるようになっていきました。後編の終わりごろから仕事が忙しくなったため通えなくなってしまいました。
その頃はただ忙しいというラットレースのような状態で、この生活を変えなければと思っていたのですが同じことの繰り返し。
色々思い直して、もう一度最初から勉強しなおそうという気持ちで再度メンタルに通うことにしたのです。
久しぶりに再受講して自分の変化に驚きました。
数年前に聞いた同じ講座なのに、とてもよく理解できる。
聞くポイントも違うし感じ方も変わった。
自分の成長を感じる嬉しい瞬間でした。再受講を楽しみに通っていたある日、息子が来ていることに気付きました。
同じ教室の向こう側の席に息子が座っている。
私は一瞬胸が熱くなり涙がこぼれそうになりました。
これから一緒に勉強していけるのだと思ったら本当に嬉しくて、両手を組み合わせて「ありがとうございます」と小さくつぶやきました。
今ではメンタルで学んだことを基にいろんなことを話し合ったりしています。今回このレポートを私はどうしても書けなくてずっと後回しにしていました。
息子は先に書き終わっている。私も書いてしまえばすっきりするのに・・。
なぜか書けない。どうしても書く気になれない。
しまいには、修了式には行かなくてもいい、そんな言い訳で書くことを避けようとしている自分にも気付いているのです。
息子には何度も「もう卒業レポート書いたの?」と聞かれました。
何度も聞かれるうちに「書いたの」という言葉が「書いて欲しい」と、私には聞こえてきたのです。
励ましてくれている気持ちも伝わってきます。
修了式は先にもあるけど、息子と一緒の思い出はこの時だけだ。
そう思って卒業レポート提出期限の日にこれを書いています。過去のことを書きながら何度も何度も涙が出ました。
よい振り返りになったと思います。前を向いて清清しい気持ちで修了式に出席できます。
学んだことを日々の生活に取り入れて、世の中に役立つ生き方を見つけていきたいと思います。

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