魔法は自分にかけよう!

      2019/04/21

 私たちは、他人のことはよく見えます。でも、自分のことは意外と見えないものです。

 人が成長するにあたり、第三の目が養われると言われます。この第三の悟りの目は、自分の周囲を見つめる視線ではなく、自分自身のことを冷静に見つめなおす視点のことです。

 僕の周りは、ここのところベビーラッシュが続いています。たくさん未来の可能性が、誕生しています。

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 彼らはスゴイことに、22世紀を見る可能性があるのです。心から健やかなれと願っています。

 赤ちゃんの視線は、静かなる子宮の世界に別れを告げ、このにぎやかな世界に視線が注がれます。まぶしい光や、にぎやかな音、たくさんの人に迎えられ、外気にふれ、この世界に慣れ親しんでいくのです。

 さらに、赤ちゃんは、自分から行動を始めると、驚くほど脳細胞が連結し、発達をとげます。

 アクションを起こしながら、子供は気づくのです。物を投げると、物が飛ぶこと。何かオモチャを持って叩くと、いろんな音がすることなど。さらに、泣いたり、むずがったりすると、親が飛んできて、なだめてくれることを…自分の思いどおりに、周囲を動かすテクニックを学んでいくのです。

 やがて、自分の望むように大人を動かす、この不可思議な魔法を身につけ、彼らは幼稚園や学校へと進むことになります。

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 ここで、彼らにショックなことが起こります。この幼い魔法は、家でしか通用しないこと、さらに仲間の誰もが、この魔法を使って、誰かを思い通りに、動かそうとしていることを同時に知るのです。

 そこで、幼い魔法使いたちは、幼い魔法から離れないといけなくなります。これが、幼児期・学童期前期の特徴です。

 集団の中で魔法の修正を学びます。愛を獲得するために、お母さんを見習って、自分のお母さんのように振舞って、相手にお姉さん的になる子供もいます。お父さんのように怖い顔で、お友だちに命令しょうとする子どももいるでしょう。お互いにワガママな魔法をかけ合って、お互いが泣き合う子どもたち…

 そうやって、多かれ少なかれ、私たちは、他人をコントロールすることを学びます。

 そして、真なる大人になる究極の魔法は、お釈迦さまが言った、周囲をコントロールすることではなく、自分自身を制御し、自分を変える魔法です。それが、悟りへの道だと言いました。

 相談に来られる悩んでいる人は、誰かをコントロールすることに、すべてのエネルギーを注いでいます。

 でも、人間関係とは、自転車のペダルの回転と後輪の回転のように、目に見えないチェーンでつながっています。こちら側の回転数が変わると、向こうの回転数も変わるのです。自分自身の行動を変えると、相手の行動も変わるのです。

 ですから、義理の母とウマが合わないのですと、相談に来られた相談者は「お姑さんが、もう少し変わってくれたら…」と、言いながら、姑がリビングにいる間は、自分はキッチンに立つ。姑が二階に上がると、お嫁さんは一階に降りてくる。これではウマが合うはずがありません。

 そこで、僕たちカウンセラーは「5分間、義理のお母さんと一緒に過ごす練習をして下さい」と依頼する。「お母さんが、テレビを観ていたら、一緒に観てください!」「お母さんが洗い物をしていたら、一緒に皿をふいてください!」5分間なら一緒に過ごせるでしょう。それが、10分になり、20分になり…

 次に、何かを質問してみましょう。「お母さん、今日は夕飯何にしましょうか?何か食べたいものがありますか?」「お母さん、今日は新聞に何か気になった記事ありました?」「今日の相撲の結果はどうだったですか?」一日一回なら質問出来るでしょうと依頼すると「え~、一日一回なら」と応じる。

 そして、こちらが質問した内容について、自分の情報も流してください。「お母さん、今日のチラシに、お刺身が特価だって載っていましたよ」「今日はテレビで、お母さんの好きな、力士さんが出るんですって」と、もちろん、お母さんが興味がある情報をアイ・メッセージで流して下さい。

 その質問と自己開示を一日、少しずつ増やして下さい。

 嫌な上司にも同じことです。「イヤだなぁ」と思って、上司に接すると、こちらの気持ちは以心伝心で、その上司に心が伝わるものです。それが、気まずい関係性をよけいに変えられないものにしていきます。なるべくイヤな上司の、そばに近づき様子を見ていると、チャンスはあります。離れると心の距離感も広がります。これを「単純接触の法則と心理学では言います。上司がペンを探していると「もし、よければ使って下さい!書くメモ用紙はコレを!」と小さな恩を売って、心理的に優位に立つのです。

 嫌味でミスを指摘されても、笑顔で「ご指導ありがとうございます!」そして、後日「この間の、ご指導どおりやってみたら、お客様に喜んでいただきました」と感謝のアイ・メッセージを伝えます。

 お姑さんのことで悩んでいた相談者は報告が変わってきます。お姑さんが変わって来ました。これは、お姑さんが変わったと言うよりも、こちらが変わったのです。

 ただ急激な変化は、変えようとする側も、それに影響を受ける側にも、抵抗感を感じます。ですから、それを徐々に行います。これをアメリカのコーエン博士は、Step by Step 療法と呼んでいます。

 こんなことを書くと、人生を勝つか負けるかで、考えがちな人は「相手に媚びているみたいでイヤだなぁ~」という人がいます。でも「いつも負けてたまるかの精神」は、子どもの精神と同じです。そして、相手が変わらないと、自分としては納得できないのも、幼い精神の現れです。大人は、臨機応変、柔軟に対応ができるものです。

 弱い犬ほどよく吠えると言いますが「自分に自信がない人」ほど、自分が相手におれたり、ゆずったりするコトに抵抗を感じてしまうものです。子どものように、小さなプライドにこだわっているからです。

 「自分は間違っていない」「自分は正しい!」しか見えなくなり、相手と楽しく生きることが人生の充実だ、という大切なことを見失うってしまっているのです。

 あなたが簡単には「変わりたくない」と思っているように、相手も簡単には「変えられないぞ!」と思っています。そんな相手のことを心の中で「こうあるべき!普通は、そうすべき!」とあなたの価値観を「べき、べき」と叫んでも、あなたの周囲の人たちは、普通の常識や正しさだけで、動いてくれる人だけではないのです。

 子どもと違って、大人が身につける大人の魔法は、自分自身を変える魔法なのです。







日本メンタルヘルス協会:衛藤信之のつぶやき


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