静かな旅立ち…
2019/04/21
人生にはピリオドがある。
昔、アメリカで「元気なんだけど、君達の命があと三日しかなければ何をしたいか?」皆それぞれにアイディアを考えて来いという課題が出されたことがあります。
若い時代だから「大好きな彼に愛を告白する」という人もいたが「あの人にゴメンなさい」と伝えるとか「笑顔で両親のお手伝いをしたい」「すべての人にありがとうと伝える」「ケンカの絶えない妹に優しくする」とか感動の発表が続きました。
最後に教授が「皆さん素晴らしい!一つだけ考えて欲しい。皆さんは三日間しかなければ、それをするのに、どうして一生となるとしないのですか?」としめくくった。
ガンで余命宣告された人が「今年で最後になるかも」と思って見る桜と、通勤時に「キレイね」と通りすがりに見る桜の花には違いがあるのかもしれません。
戦地に、おもむく青年士官が「最後に!」と恋人の手にふれるのと、毎週のデートでふれる恋人の手には、手の細胞深くに記憶されようとする感覚が違うと思っています。
小児がん病棟で子どもに「明日も起きてね」と願いながら子どもを寝かしつける母親と、明日も子どもが元気で当然だと思い「早く寝なさい!」と子ども部屋に追い立てる親には違いがありました。
いつも、このブログの最後に僕の横顔のシルエットのマークがあります。それは、博多校の生徒さんが、感想文の横に落書きのように書かれていたものです。僕が感動して「これもらえますか?」と言ったら、その人は「では清書して次回持ってきます」と言って下さって、次の回にCD-Rに入れたものを頂きました。
その人はデザインのプロでした。それからは、僕はこのマークを気に入って使っています。このマークをシールにしているので、バックにもスマホにも貼っています。
ある駅で僕のキャリーバックに貼られていたシールを見て、後ろからかけ寄って来た若い女性がいました。「心理カウンセラーの方ですよね?」「はい!」と僕。「どこかの教室か、講演会に来て下さったのですか?」「いえ、このマークのブログを見ていますから」「ありがとうございます。衛藤と言います」と挨拶しました。その女性は僕の名前は知らないけど、このマークは憶えていてくれたのです。
海外からの旅行者からはエレベーターの中で「これは君だね!」と必ず声をかけられます。
ステキなデザインです。髪型だけで僕だとわかる…
僕以上に知られているこのデザインの生みの親である受講生が先日、亡くなりました。
僕はFacebookをしていないので、スタッフから「○○さんが亡くなられました。ご主人がFacebookにあげられています」と…新幹線の車内にいる僕にメールが入りました。
高速の乗り物の中で、僕の時間だけが止まった。59歳は早いのでは…
ガンに罹患されたことは知っていました。でも退院された後も教室にリピートで元気に来てくれていました。そして、風の噂で再発されたことも…
その後からも、貴女は教室にリピートに来てくれていましたね。
僕が一度「お身体のほうは、いかがですか?」と聞いても、貴女は僕の両手を握って、柔らかく微笑んでうなずくだけでしたね。
それからは、あまり病気のことは心配もされたくないだろうと思い、僕も、貴女にならって貴女を微笑んで教室にお迎えすることだけを心がけていました。
貴女は教室に来た時と同じように、静かに優しく一礼して、柔らかい微笑みだけを残して教室から出て行かれましたね。
「今日もガンバりましたね。安心しました」と言って見守ってくれているように…
「どうしていらっしゃるだろう…」と思っていた矢先の訃報。
3月19日午前11:30、最愛の妻、○○が亡くなりましたことをお知らせいたします。
卵巣癌を発症して5年2ヶ月。よく頑張ったと思います。
二度目の転移以降、抗癌治療をせずいい時間を過ごしながら戦って行こうと過ごしてまいりましたが、願いも叶わずこの日を迎えてしまいました。
誰にでも平等に優しく接し、明るく優しい人でした。
何よりも、最大限に私を理解し評価してくれました。
残念でなりません。
葬儀にあたっては、本人の強い希望で家族葬といたしました。
存命中、お世話になった皆様にはお知らせできず申し訳ございませんでした。
全て終わった後に、お知らせしてほしいとの希望でしたので、今、お知らせした次第でございます。
妻とお付き合いいただいた全ての方に、お礼を申し上げます。
本当にありがとうございました。
ご主人の文章から、貴女らしい静かな日常と、ご主人の貴女への思いが伝わり、ご家族のたたずまいすら感じられる文面でした。まるで優しい絵本を読んだ後のように、貴女は柔らかく微笑んで、次の世界に静かに出て行かれたのだと…
言葉を使う仕事をしている僕に、静けさの中にたくさんの優しい言葉があることを教えてくれたのは貴女でした…
貴女の残してくれた僕のマークは、これからもブログの最後に、静かに、そして雄弁に、貴女の微笑みと共に文章の最後をしめくくってくれることでしょう。
ありがとう。
また、次の世界でも微笑んで僕の手を握って下さいね。
その微笑みの中に「ガンバってましたね。衛藤先生!」があるのを僕は知っているから…