隣で静かに微笑んでいなさい

      2019/04/21

 「会社で隣に座っている仲間が、いつもネガティヴな事ばかり言っているから『もっとポジティブになったら』と、言っても、いつも後ろ向きな言動ばかりを繰り返すのです。どうすれば良いでしょうか?」

 この質問は、よく聞かれます。

 少し前のブログでも伝えましたが、私達は、多くの人と一緒の世界に住んでいると思っているかもしれませんが、人は、それぞれの世界観で住んでいるのです。ですから、住む世界がそれぞれに違うのです。肉食のライオンに「あなた、時おり食物繊維の多い野菜を食べなきゃいけないでしょ!」とお節介をやいても「僕はライオンだから」としか、言いようがない。
 また、キリンさんに「やっぱり肉のアミノ酸や、たんぱく質を取らなきゃダメでしょ!たまには血の滴るような肉を食べなさい」と言われても「私はキリンだから」としか、応えられない。

 ネガティヴの世界で生きている人は、そのネガティヴの世界が好きなのです。イヤなら出てきます。ツライ、ツライと言っている人は、やはりツライ世界が好きなのです。

 迷っている、悩んでいる人も同じです。イヤなら止めます。

 「うどん」を食べるか「そば」を食べるか悩んでいる時には、うどんを食べても、そばを食べても、死にはしないのです。そこそこ満足しそうだから人は悩み迷うのです。「そば」を食べれば、そばアレルギーがあり「食べれば死ぬような人」は、迷いも悩みもなく「うどん!」を選びます。

 「うどん」を食べても「そば」を食べても死なないから迷うのです。どちらを食べても満足しそうだから、人は悩むのです。
 であるのなら「楽しんで悩めばいい」のです。
 そして、どちらにしても、死なないし、満足しそうなら、サイコロを転がし、偶数なら「やる」、奇数なら「やらない」と“ 出たら目 ”に決めればいいのです。


 もっとも愚かで、残念な人は、悩んでいるうちに、大切なチャンスを失ってしまうことです。

 話がそれましたが「苦しい、苦しい」と言いながら「そこ」の世界にいることは、けっこう気に入っているのです。
 風呂が熱けりゃ、人はあわてて飛び出します。その世界に居続けると言うことは、その人は、その自分の世界が好きなのです。
 苦しいなら自分で脱出するアクションを起こします。

 よくある事例で、お母さんが口うるさいと言いながら、家賃を払わないで食事にありつけるメリットを選択しているのかもしれません。主人が、イヤだと言いながら、自分で生活をし、働いて自立するストレスを考えないですむのです。
 だから、イヤだ、イヤだと言っていても、メリットが「そこにも」あるのです。職場でも「こんな仕事!」と言いながら、安定した収入を手放すことのリスクを避けています。
 ならば「自分は積極的に、それを選んでいる!」と宣言したほうが前向きなのです。でも、そうは簡単にはいかないのが人間なのかもしれません。

 「縁無き衆生は度し難し」と言いますが、誰かがネガティヴの人を助けたいと思っても、本人が助かりたいと思っていない限り、助けられないのです。変わりたいと言っても、いつも言葉だけで、本人が変わる努力やアクションをしない人を、変えることは何びとであってもできません!

 そして、隣の人のネガティヴな言動が気になるのは、ネガティヴよりもポジティブのほうが「絶対に正しい!」と、思っている側にも問題があります。「私は正しく、相手が間違い!だから、教えてあげようと思っている私は『善』で、相手が『悪』という」人を裁く心理が隠れています。僕は、それもネガティヴな考えだと思っています。

 時おり、ネガティヴがあるから、ポジティブが活きるのです。冬がないと、春の素晴らしさがわかりません。悲しみの季節を乗り越えてこそ、幸せの充実感を満喫できるのです。だったらネガティヴの世界の人を躍起になって救おうとしてイライラするよりも、ネガティヴな人を横目にしながら、誰かを裁かないで、ポジティブな自分を精一杯楽しめば良いのです。これを「モデリング」と呼びます。

 また、隣のネガティヴが気になるのは「自分の中に眠るネガティヴ」が反応するからです。これをマイナスのインジャクション(負の投影)と呼びます。隣のネガティヴな人に、自分が抑え、忘れる努力をしてきた「自分の中にあるネガティヴ」がズキズキと疼くからです。

 人は、それぞれです。

 キリン、象、ライオン、シマウマ、と、同じ世界に住んでいても、その人が、それぞれの世界を選んで住んでいるのです。これを「離別感」と呼びます。一緒にいても、身近な存在でも一緒ではないのです。

 だから、お節介せずに、あなたは隣でモデリングして、笑ってましょう!

 こちらの世界が良さそうなら、やがては隣の人も、こちらの世界に入って来るかもしれません。だから、言葉でお節介するよりも、行動で伝えましょう。

 安心して下さい。カウンセラーでも、ヘタなカウンセラーは前向きになれない相談者にイライラするカウンセラーがいます。
 これも「早く解決し、前向きになれないのは、私が能力がないからだ」と、間違ったイラショナル・ビリーフに苦しんでいるからです。

 カウンセリングをして解決するのは相談者なのです。これはとても重要な考えです。僕はアメリカでロジャース博士に教わりました。
 だから、悩みが解決してもカウンセラーの手柄ではないのです。それは、相談者が変わろうと努力してくれたからです。ですから、カウンセラーが有頂天にならず、尊大にならないで謙虚でいられる、大切なロジャース博士の教えです。

 この教えは医者にも、教師にも大切な戒めになります。



 ※2015年5月10日福岡校修了式258名、キャナルシティ・グランドハイアット福岡

 
※2015年5月17日名古屋校修了式255名、名古屋マリオットアソシアホテル












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