落ちる時にはしっかり落ちよう！
＜質問＞
昨年の一年間は、厄年でもないのに不幸が重なりました。夫を亡くしただけでなく、仕事では人のミスで大やけどを負い、３ヵ月の休職を余儀なくされ・・・、ようやく職場に復帰できたと思ったら、今度は車で信号待ちをしているときに後ろから追突される始末。こんなに悪いことばかり続くと、いくら気にしないようにしようとしても、心が折れてしまいます。
ひろみさん（６０歳）
今回のご相談者のように、すべてから見放されたような気持ちになる時が人生にはありますね。これは相談者だけではなく、何度も不幸が重なると「また何か不幸が起きるのかもしれない」と不安になります。これは誰もが起こり得る自然な心理です。これを「マイナスな自己暗示」と呼びます。
だから、マイナスな暗示にかからない為に考え方や出来事の受け取り方を変える必要があります。
人生を縄に例えて「禍福は糾える縄の如し」「幸福と不幸は交互にやってくるものだ」という意味の故事成語です。読み方は「かふくはあざなえるなわのごとし」といいます。確かにそうかもしれません。誰しも永遠に幸せ続きもないし、不幸続きもないのです。
不幸な時の考え方、過ごし方で、未来が変わると思います。海の波が盛り上がるように周囲に持ち上げられて、運気すべてが順風満帆な幸福な時もあります。これは波がピークの幸せの高さにある時です。でも、必ず波は最大の高さのピークを永遠に保っていられるわけもなく、やがて波は下降していきます。これが谷に向かう時です。これが今回の相談者の時です。この谷に下がるエネルギーで、次に上がって行く力が蓄えられます。例えるならジェットコースターを思い出して下さい。落ちるエネルギーを利用して、さらに次への頂点に向かいます。その落ちる時にはしっかり落ちきってエネルギーを蓄えるのです。
ですから、この谷の不幸が続く時の生活の過ごし方で未来が変わってきます。
落ちる時にこそ「何かを始めるべきだ」と考えます。落ちていく時に「最悪」と思って頭を抱えているとチャンスを逃します。この最悪な時期は新たなチャンスの準備だと思うことです。危機という字は「危」という字と、機が熟すの「機」という字から成り立っています。どちらにも転ぶ可能性があります。
人間がジャンプする時には、一旦はしゃがみます。
矢を遠くへ飛ばす時には、後方に腕を引きます。蝶々になる前のサナギの中はドロドロの状態になっているそうです。そのカオス（混沌）から美しい蝶々が生まれて来るのです。
何か新しく人生が始まる時には、混沌な状態に陥ります。その時にこそ未来を見据えて何か新しいことをすることを僕はお勧めします。身体を動かすためにジョギングを始めても良いでしょう。
ただ悩み苦しんでいる時には「身体を動かす気にもならないから」と思ってしまいます。でも、それは誤解です。身体を動かしているから心も頭も爽快になって次の一手が生まれるのです。それが人間という思考を持った生き物です。
例えば、コロナ禍（混沌）の時に、何かを始めた人と、何もしなかった人にも、未来に人生の違いが生まれます。
自分ごとで恐縮ですが、僕は民間の心理カウンセラーを長年やってきました。顧問企業も多く契約をしています。ですから活動するのに何も問題はなかったのです。でも、今回コロナ禍に入ったことで時間があったので再び勉強をしなおして、腕だめしで国家資格を受験し、お陰様で公認心理師を取得しました。そして、このコロナの期間にYouTubeも始めました。また教室の楽しいお話をネット配信することで海外にも心理学の受講生が広がりました。
ですから、この苦しみの時に、しっかりエネルギーを蓄えるためにも、何かを始めるのが良いと思います。
もう一つは、僕は最悪の時にはうろたえないで、神様に下駄を預けるのが良いと思っています。過去の出来事を振り返ってみても、最悪な時に、その後になって「あれがあったから今があるなぁ」と思えることも多々ありませんか。大切な人との出会いがあったり、学びや気づきもそうです。そう考えると空の雲は永遠に真上に止まりそこに永遠に存在してはいません。必ず、自分の上から暗雲は通り過ぎてゆきます。ですから振り返れば永遠に不幸続きということはありません。
これは我々の努力とは別の人智を越えたことです。だから心の中で神さまに未来をお任せするのです。もちろん、それは神社仏閣に行けと言っているのではなく、自分の中で「なにとぞ、よろしくお願いします」と心の中でお任せするのです。そして目の前の丁重にやるべきことをしっかりする。行動を少しでも前に進めると気持ちは後ろ向きになることが少なくなります。
逆に「何か悪いことが起きるのではないか？」と思って生きていると、ビクビク過ごすことで身体は萎縮し、何をしていても気持ちが、ここにあらずのまま行動するので、やがて自ら新たな失敗を引き寄せてしまう可能性が高くなります。また、気分が不安定だとホルモンバランスが崩れ免疫なども下がりますから病気にもなりやすくなります。ですから最後はあなたを信じましょう。
ミシェル・モンテーニュ（1533〜1592没）が亡くなる直前にこう言っている。
人生はとてつもなく不運に満ちていると思っていた。しかし、その多くは現実には起こらなかった。
心の神様に下駄を預けて笑顔でいましょう。
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心理カウンセラー衛藤信之
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