自分の正体を知っているか?

      2022/05/21

 この人には近づかないほうが良いと言われるタイプの人を「ダークトライアド」と呼ばれ、悪の三要素とも呼ばれています。

 サイコパス、ナルシスト、マキャベリストです。

 【サイコパス】は最近、脳科学者・中野信子さんの本で日本で話題になりましたね。サイコパスは共感能力が低いために、お葬式の場では、愛おしい人が亡くなった悲しみで泣いているのに、サイコパスの人は涙を流しながら、この泣き顔は美しく見えるのかという演出に意識が向いています。

 【ナルシスト】は簡単にいうと自己中心性の強いキャラクターです。自分自身が歌を歌う時に周囲が聞いていないと不機嫌になり、他人が歌を歌い出すと誰かとおしゃべりを始めたり退屈そうに時計を見始める。自分のことは自慢するが他人の成功話には不愉快になるタイプです。

 【マキャベリスト】とは、友達は多いが長くつながっている友達は少ない。なぜなら、この性格の特徴は「自分に役に立つかどうかが友達の基準」になるからです。自分に役立つ人には、努力を惜しまないで急接近するけれど、自分に役立たないと思うと無関心になり連絡も取りません。

 このダークトライアドを持つ人は、外に見せる顔は最高なので意外にも他者からの評価は高いともいわれています。ベルギーのバート・ウイル氏によればビジネスでも組織の上位職に多く見られ成功しているというのです。

 あなたのリーダーはどうでしょうか?

 ただ「移り気なところ」を「新しい体験に積極的」へと変化させ
  「自己中心」なところを「自己肯定感」に変え
  「役立つ人に急接近する」のを「社交性」に変化させ
  「自己演出力」を「プレゼン力」にポジティブに変化させることに成功すればウイル氏の言われることにも説得力が増します。

 人はどちらの方向にも向かうことが可能です。僕はどちらを開花させるかで人は変わってくるものだと考えています。大切なことは出会いですね。いい指導者に出会えることが大切です。

 スペイン出身のハビエル・ガルダラ教授はこう語ります。

 ダークトライアドの因子を持った人がリーダーであった場合、外から見ると熱心で、頭の回転もよく、社交的で、自己肯定感も高く、なかなかの人気者で集団を効率的に束ねてもくれます。

 「でも本当のリーダーシップは去った後にわかるものだ!」というのです。

 ガルダラ教授は、ある大学の部長を例にとって説明しています。

 【ナルシストの部長】は、自分がやめた途端にクラブに対して無関心になり、発表会とか試合とか、合宿の時なども、後輩の応援に一度も行かず、そのクラブの発表会には、もう全く興味を失ってしまう。それは見事だという。その部長はナルシシズムのために、クラブを利用していたことがこれでわかるというのです。

 【サイコパスの部長】は、自分が辞める時に無関心というよりも、むしろ「このクラブが潰れたらよい」と望みながら去る。「見るかげもなく、このクラブの崩壊を願っています。なぜか?それはクラブに関わる皆は、いかに私が良いリーダーだったか、いかに私が必要不可欠な存在であったかを認めてくれるだろう」と醜い心をもって去ってゆくタイプです。

 【マキャベリストの部長】は、リーダーから黒幕に変わるだけだといいます。
次のような陰謀的な態度が見られます。そろそろ辞める時期が来るとわかったら、今度の副部長や会計係になるだろうという重要人物にご馳走して、義理を感じさせ、しっかり味方につけてから去るのです。去るといっても、本当に去るわけではありません。陰から然るべきタイミングで糸を引いて、自分の思うままにそのクラブを動かし、別のかたちでコントロールしてリーダーとして存在を誇示します。

 【健全な部長】は、去った後でもクラブを気にかけ、後に残した人たちを気遣い。もし頼まれれば、新しい構成メンバーにアドバイスをしに飛んでいくけれども、呼ばれなければ黙って差し入れをするだけです。そして、心の中では本気でそのクラブの成功を祈り、後輩たちを信じて微笑んでいます。

 これは心の仕事をしていると、どんな人間関係にも見え隠れしています。

 マキャベリスト的な両親の息子や娘と結婚した人は不幸です。自分の息子や娘の夫婦生活を心配だからと陰でコントロールすることで、やがてその子ども夫婦の配偶者のリーダーシップを、わざとではなくとも、徐々に破壊させてしまいます。

 サイコパスを持った恋人は「因幡の白兎」のようにサメを計画的に配置して向こうの岸辺に向かいます。サイコパスの性格は、相手は自分を高めるための道具に過ぎないので相手に得るものがなくなれば無関心になり、次のサメにしか興味がありません。その踏まれたサメたちが痛がっていることには、まったくの無関心です。

 ナルシシズムの人間にとって友人や恋人を失うことが恐怖ではありません。ナルシストにとって本当の恐怖は、友人や恋人を失った後に、訪れる自分の孤独を考えることが一番不安なのです。

 ここまで読んできて読者は自分自身に不信感を抱かれた方も多いかもしれません。これらは極端な事例です。がしかし、多かれ少なかれ人には、これらの要素はあるものです。僕にもあると思います。

 だからこそ心理学の勉強は、自分を突き放してクールに自分を見つめる学問なのです。そうすれば自分を正しくコントロールできるからです。だから、学びは永遠に大切なのですよ。

 ダークトライアドの研究は始まったばかりです。このパーソナリティ群の一番の問題は、自分は誰かを愛していると本当に信じて疑わないことに、最大の欠点があるのです。

 まさに古代ギリシャの格言「汝自身を知れ」ですね!


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心理カウンセラー衛藤信之
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