生きる意味と責任
2024/03/30
水中写真を撮る女性ダイバーが、いつも夫とバディ(相棒)を組んで潜っていました。その夫が事故で亡くなった。
その後、いつものように水中写真の仕事が舞い込んできた。久しぶりの水中の写真撮影に夢中になり、自分から命綱が外れていることに彼女は気づかなかった。いつもは夫が命綱をサポートしてくれていたのです。ケーブダイビング(海の中の洞窟)で命綱を見失うことは死に直結する。
気づけば空気の残量もわずかしか残されていませんでした。彼女はパニックに襲われました。でも、その時に「大丈夫だよ」「落ち着いて」「君なら見つけられる」「あの穴から君は来たよ」と頭の中で夫の声が響いたのです。
そして、彼女は九死に一生を得ました。
海難事故に遭った男性が、船体の切れ端に捕まって漂流している時、その人は疲れて眠ってしまった。すると「起きろ!」「船が近づいている。声をあげろ!」と父の声がした。そして、漁船に発見されて助けられた。
9・11のテロの時にも、下からの火を恐れて上に向かって多くの人が逃げる中「上に行くな、その目の前の炎を潜れば絶対に逃げられる。自分を信じろ!」と自分の中で声がした。99%の人が煙と炎を避けて上に行きビルの倒壊で命を失った中で、その人は誰かの声で炎の壁を通り階段で下に逃げてレスキュー隊に救出された。
登山家では、絶体絶命が訪れた時に、自分をサポートする存在に出会うという。
精神科医のV・フランクルも亡くなった妻の存在に出会っています。ドイツの捕虜収容所での地獄のような苦しみの中で、捕虜仲間が「こんな惨めな姿を妻には見られたくない」と苦しみを吐露した。
フランクルも、それに共感しようとした時、彼の心に現実よりもハッキリとした声で「フランクル、あなたはステキよ。今のあなたは美しい!」と妻が笑顔で励ましてくれた。(現実、この時に妻はこの世には存在しない)
それは現実よりも生き生きしてリアルな面影だったと彼は語っています。どれだけ看守の「早くしないか、この豚犬ども!」と怒号が飛び交う中であっても、フルンクルの妻との対話は続いたという。
フランクルはこの経験から「人間の愛は肉体の死によって消滅などしない。人間の本質は肉体でなく、生死を超えた精神にあり、精神は永遠不滅の存在であり、肉体は単に精神が物質次元に投影された分身に過ぎない」と言っています。
それを踏まえ、妻に2年前に先立たれて抑鬱状態の患者に、フランクルは「もしあなたが奥さんより先に亡くなっていたとしたら、あなたの奥さんはどうしたでしょう?」
すると彼は、「妻は苦しんだと思います」。
「なら、お分かりでしょう。あなたが奥さんの苦しみを救い、奥さんの苦しみを解放したのは、今の『あなた』ですよ。その苦しみが愛の証明じゃないですか…」
その人はフランクルの手を強く握って生きる決心をしました。
また別の事例で、やはり妻に先立たれ、絶望のために自殺を何度も試み、入院してきた初老の男性が、「私が今、自殺を踏みとどまっているのは、妻の墓を立てるという責任があるからです」。
フランクルは「その他に、あなたは生きる意味はないのですか?」「私にとって、すべては無意味だし、すべては空虚です」
「では、すでに存在しない妻のために、墓石を立てるといった行為は、現実的には空虚なのに、あなたは心の中で『愛する妻が喜んでくれる』と信じているのは、なぜですか?それはある種の目に見えない存在への『愛の行為』なのに、亡くなった妻のために、この苦しみに耐えているのも『愛の行為だ』と、なぜあなたは考えないのですか?」
フランクルが伝えたかったこと、先に逝った妻が望んでいることは、生きることであり、愛する人を失った悲しみのために人生を空転させ、亡くなった妻に「先に逝った罪」として断罪しない行為だと言いたいのです。こうしてこの男性は生きる意味と責任を自覚しました。
人は絶体絶命の中に「強く生きる意味」が問われます。目に見えない何かが「まだ生きて役割を果たしなさい」と使命を与えているのかもしれません。
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心理カウンセラー衛藤信之
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