温もりは、どちらから…
2019/04/21
残された便だけを待つ飛行場は、とても静かな場所に変わってしまいます。
途中に通過するだけの搭乗口は、多くの人を見送り、そして出迎え、一日のあわただしい役割を終え、シーンと静かに休息に入っている。
最終便に向かうムービングウォークだけが「まだ、大丈夫ですよ」と安心感を与えるように静かに搭乗口に導いてくれる。
搭乗口では、遊び疲れた若者や、仕事を終えて家路に向かうビジネスマン。朝の搭乗口とは違って、目的地に着いても休息するしかないからなのか、旅立ちにしては脱力感の漂ようツーリストたちが、静かに搭乗の時を待つ。
「お姉ちゃんこれに乗るの?」「そう、この飛行機に乗るのよ」と会話しながら、幼い少女と20代前半くらいの女性が、待ち合いロビーのイスに座った。
「親子じゃない⁉︎」と僕。
女性は「お姉ちゃんがいるから大丈夫だからね」と、少女を勇気づけながら、自分自身の不安感にも「大丈夫だよ」といい聞かせているように僕には聞こえた。
搭乗のボーディングブリッジで少女は、お姉ちゃんの手をシッカリと握って歩く、絶対に置いてきぼりにされないように。少女の片方の手に抱かれている縫いぐるみの手が揺れている。少女が縫いぐるみに「一緒に行くよ!」と手を引いて行くように、自分がお姉さんに導かれているのと同じような姿で…
それが、何とも可愛くて…
機内では通路をはさんで、2人と偶然に同じ列番号の席に座った。僕は、本を読みながらも、時折、母ではない女性が、少女に毛布をかけたり、少女のモニターを操作してあげたりと、立派なお母さんぶりで、気遣っていることに「ホッと」しながら…
僕が読書に入り込んでいると、飛行機は目的地に到着。
降りる頃には、少女は眠たくなったのか女性を抱きしめるように、抱っこされている。
そう、まさに、「抱きしめるように、抱っこされている」というのがピッタリなのです。
思い出しました…子どもを抱く時の、あの安心感。
その光景を見て思い出しました、あの懐かしい感覚…
もう、僕は子供たちを抱きしめて移動する時期は、過ぎ去ってしまったけれど、その光景を見てて「羨ましくて、羨ましくて」身体に残る子どもたちの温もりを思い出しました。
僕の周囲には、まだ、その季節を過ごしているメンバーがたくさんいます。だから「今、ここ」の温もりを、楽しんで欲しいと願っています。その温もりが思い出に変わる前に…
女性が少女を抱きしめているのか、少女に女性が抱きしめられているのか、お互いに不安なフライトは、お互いを抱きしめ合いながら無事に終わりました。
到着ロビーに出ると、少女の両親が女性に「ご苦労さま、ありがとう。疲れたでしょう!」「大丈夫です。いい子だから」と彼女。
また一歩、その女性は、大人になる準備を、母になる自信をもらったようでした。
頼っていた自分が、誰かに頼られることで強くなれる。
大人の階段は、そんなバトンを渡すリレーのようなものかもしれません。