共感する思いが、幸せにつながる。
2019/04/21
その不幸な人たちの共通点は「自分のことだけ」に集中してしまっている。
自分の不幸、自分の思うようにならない生活、自分の生い立ち etc.
人生がうまくいっている人のことを「あの人は運がいい」と言います。いつも、うまくいかない人を「運が悪い」と言います。
この「運」も、最近では、心理学的なアプローチによって説明されつつあります。
京大の藤井教授が「運」の良い人は「利他的」で、他人の幸せを考えて活動することが多いのに対し、運の悪い人は、自分のことばかりに意識が向いていて、自分自身の損得だけを考え「利己的」に行動する人が多いと紹介しました。「あの人は、人間的に器が大きい」と言われる人を数値化したものです。
これを「認知フォーカシング理論」と言います。
いつも、その人が「心の中で考える基準が、自己中心なのか、周囲の幸せを考えての、行動なのか?」その選択で、人生の「幸運度」が決まると発表したのです。
藤井教授は「運」のある人を「配慮の範囲」の広さで表しました。
配慮の範囲の一つは「関係の範囲」です。
自己中心なのか、広い範囲の人間関係を意識しているのかで表します。
二つ目は「時間の範囲」です。
目先のことなのか、未来のことを考えての行動か?
縦軸が「関係の範囲」です。
自分⇒家族⇒親戚⇒友人⇒職場の仲間⇒自分の国⇒多くの国と、広がれば、広がるほどに縦線は長くなります。これが「自分だけ」のことになる人は利己主義者です。
横軸は「時間範囲」の広がりです。
目先のこと⇒今日のこと⇒3日先⇒1年後⇒自分の未来⇒子孫の未来⇒地球全体の将来⇒宇宙の未来までも考えたりすれば無限に長くなります。
これが縦、横に大きく広がれば、広がるほどに「運」が良いと言われる人だったのです。このような人は「器の大きな人物」と言われ、周りの人びとから慕われています。
利己的な人は、自分のことしか考えず、目先の損得で行動するので「配慮の範囲」が狭い人です。逆に、他人や遠い未来の幸せまで思いをはせる人は「配慮の範囲」がとても広い人になります。
自分勝手な人は、一時的にビジネスで成功したように見えても、まわりの人びとは、成功するための道具やネットワークでしかないのです。やがて仲間が離れてしまい、人生をトータルして眺めて観ていると「損」をしてしまっているような人生で終わります。
逆に「配慮の範囲」が広い人は、周囲から好かれ「あの人のためなら協力したい」と思うような人が、次々と現れます。いつも多くの人が、こぞって助けてくれるので、そのことが一見、周囲から見ると「運」がいい人に思えるようです。その例として、坂本龍馬は、狭い土佐藩を飛び出してしまいました。それは、日本のこと、世界のことを考えていたからです。そんな龍馬だから、多くの仲間たちが彼を慕って集まったのです。
最近の研究では、この運の良い人と言われ、愛され、好かれるには、脳内物質が大きく関与していると言われています。
メンタルでは脳のコントロール法で学びますが、人は誰かを愛するとドーパミン、βエンドルフィン、オキシトシンと呼ばれる脳内物質が放出されます。これらは「恋愛ホルモン」と呼ばれるものです。記憶力が増し、活力がみなぎり、免疫力を高め、イキイキと若々しく、いつまでも元気です。
反対に、誰かを攻撃し、憎み、嫉妬し「失敗しろ!不幸になれ!」と、他人を呪い、自分を悲観するとアドレナリン、ノルアドレナリンが放出されます。これは攻撃的なホルモンですから、相手を攻撃するための瞬発力はあっても、これらの脳内物質が長時間出し過ぎると、血圧を高めて、血糖値を上げ、心臓に負担をかけます。そして、交感神経が優位になるので、消化活動に異常をきたし、胃炎にもなります。だから、イライラしている人は、幸せになれないし、寿命を縮めてしまっているのです。何よりも「恋愛ホルモン」を出す、脳そのものを萎縮させてしまいます。だから、年老いて、やる気を失い、誰とも話さなくなると、脳はいちじるしく萎縮してしまうのです。
「恋愛は4年の期間で終わりをむかえる」と、人類学者のH・E・フィッシャーは発表し話題になりました。彼は、多くの動物を研究する中で求愛行動から、生殖行動が終わると、相手を見向きもしなくなると言うのです。動物の中では人間は長いほうです。
この説は、心理学では「刺激鈍麻の法則」と呼び、常に興奮し続けると、身体の中で脳がエネルギーを一番使っています。ですから、すべての出来事に慣れて、脳が省エネモードにはいるのです。そのことで、4年を越すと脳の「恋愛ホルモン」は、例外なく減っていくのです。残念ながら、恋のトキメキは時間と共に失われていく運命にあるのです。
しかし、ステキな報告もあります。愛知県の生理学研究所は「人間は、誰かが喜んでくれると思える行動には、恋愛や、美味しいもの食べるよりも、もっと多くの喜びを感じ、幸せは持続する」らしいのです。
夫婦は、子育てを協力することで、ドキドキの「恋」から「愛」へと変わってゆきます。「家族愛」「友愛」「尊敬する愛」へと変化してゆくのです。人を育てることにより、誰かの幸せなどに貢献し、協力している関係では「幸せホルモン」は途切れません。
ですから、職場でも、人の幸せを願い協力しているチームや、部下を「伸ばすぞ」と思い、育成にはげむ上司、子ども達の幸せを願っている先生などは、ハードな日々が続いても、幸せホルモンが持続し、疲れないのです。
誰かの幸せのために、多くの人びとの笑顔を夢みて行動する努力には「快楽ホルモン」の分泌が盛んにおこなわれます。
この「快楽ホルモン」は「インターロイキン6」や「コルチゾール」と言った身体によくない「悪玉物質」の分泌を抑制します。また、放出される、恋愛ホルモン「オキシトシン」が病気を攻撃する免疫力を高めます。
人は「自分」と「他人」とは違うと識別をしています。これを脳の「方向定位連合野」が受け持っています。でも、ペンシルバニア大のアンドリュー・ニューバーグ(脳はいかにして”神”を見るか-宗教体験のブレイン・サイエンス:PHP)の研究で「人間が誰かの幸せを強く願っている時『方向定位連合野』のはたらきを抑えらる力がある」と言うのです。
これが抑えられると「自分と他人が一つである感覚」「自分が孤立したものではなく、分かちがたく結ばれているという直感力」「時間を超越して、無限に広がるような超感覚」が起きるようになります。このような感覚を成功者の心理を研究した、A・マスローは、「至高経験」と名づけました。メンタルではトランスパーソナル心理学(未来心理学)で学ぶ内容ですが、成功する人には、この経験が大きく影響すると言うのです。
すべての出来事がつながりあって、自分に意味を与えているのだと感じるような「悟り」の感覚です。
これは、愛情や美味しいものを食べた時に得られる幸せとは、比べ物にならない多幸感なのです。
そこまでの感覚はなくても、素晴らしいことに、人には「共感」する能力があります。人の幸せを喜び、人の悲しみが自分のことのように心を痛めるのです。
人には「ミラーニューロン」という神経細胞が脳にあります。相手が痛がっていたら、自分にも痛みを感じます。人の痛がるのを見て、自分も同じように心が痛くなるのは、この神経回路に痛みの電気発火が起こるからだそうです。
ですから、共感能力は人間の特徴とも言えます。誰かが悲しみから立ち直って行くドラマや映画に観客は感動し、観ている側も感動の涙を流すのは「ミラーニューロン」のお陰です。よって、人の幸せになった姿を見て、自分のことのように快く思えるのは、人のすばらしさです。
ただ、自分の悩みだけにフォーカスしている人は、何かの感動的な話しを聴いても感動しません。自分のことだけに集中し過ぎて、ミラーニューロンの「共感システム」が機能していないのだと、脳科学者の中野信子さんは指摘します。(脳科学からみた祈り:潮出版社)
したがって「悩み過ぎる人」や、私は「運」が悪いと訴える人は、自分だけのことに意識が向いているので「共感力」が低下します。他人の優しさが見えなくなります。
そんな人は、メンタルに来て「いい話しを聴いても感動しないし、何も感じない」と平気で言ってしまいます。もちろん、人の感じ方は十人十色です。何も感じなくても良いのです。でも、そのような一言をポンと言ってしまうことが、メンタルに紹介したカウンセラーや、「その人を救いたい」と願っている人びとの努力を踏みにじることに気づかないのです。それほどに「自分だけの悩み」にとらわれています。
そのため、自分のことだけを悩み、考えている人は、ますます人生が下降線をたどり、人の幸せと、いつも誰かを救いたいと、未来に希望を持つ人は、どんどん幸せになれる「運」の法則が、ここにもあるようです。
だから、暗い顔ばかりしないで、今日よりも明日は、少しでも笑顔で過ごしてみませんか。それは、自分のための笑顔ではなく、人に幸せを与えるための笑顔だと信じて。それがあなた自身を、幸せに導くためのパスポートなのだから。