傷つきやすい心
2019/04/21
若者自殺が後を絶たない。
先日、ついに学校の入力ミスで他の生徒の「万引きの記録」を、間違われて入力された生徒が「私立高校への校長推薦が出来ない」と担任に言われたことで自殺に至るという悲しい事件がありました。
担任と4回面接をして、5回目の家族を入れた三者面接、直前の自殺であったそうだ。
担任に、「あなたは一年の時に、万引きをしたでしょ!」と言われて「あっ、はい」と答えたらしい。ただ、「あ!はい???」かもしれません。もちろん、学校の聴き取り調査だから真実かどうか分かりません。
ただ、他人の犯した罪を、パソコンの入力ミスで、他人履歴と自分の履歴を間違われての推薦取り消しの自殺であっただけに「学校のズサンな対応」「学校側と生徒の間に権威の壁があり『それは違っています』と言える雰囲気が今の学校にはないのだ」「先生が『あなたは万引きをしたでしょ!』と最初から決めつけているのはけしからん!」とテレビのコメンテーターも学校側に、憤りを隠さない。ましてや当初、自殺した生徒は「急性の心不全」と偽って、保護者たちへ虚偽の報告をしていたのだから、さらに学校側は弁解の余地がない。
これは、あってはいけないことです。
ただ、僕はどうしてもニュースを見ていて気になることがあります。
それは死を選択することへの安易さです。状況がどうであれ現実と戦わないで死を選択してしまうことへのスピードさです。
なぜか、戦時中の生きることが大変だった時代には自殺者が少なく、敵の恐怖も爆撃の不安もない、平和な現代のほうが自殺者が増えているのです。もちろん、戦時中も自殺が無かったわけではありません。
「敵の辱しめにあうなら」と集団自決です。でも、これは軍国時代の洗脳によって行われた自殺で、今の自殺とは質が違うような気がします。
現代の自殺は、死に向かうスピードが異常に早いのが特徴です。
日に日に科学テクノロジーは便利で豊かになってゆく。コンビニは24時間営業し、夜間には店が開いているから我慢する必要はありません。面倒な家族との会話から逃がれて、携帯電話で気の合う友人との会話は話し放題。その友人との会話すら面倒なら、一人スマホのゲームに参加すればいい。室内では冬は暖かく、夏は涼しくが実現され、食べ物で飢えることもない時代の若者からは「苦しみに耐える能力」が失われていく。
モラハラ、セクハラ、パワーハラと、ハラスメントも年々増加傾向にあります。学校では生徒がちょっとした注意に「それ先生パワハラじゃない。教育委員会に行きます!」と逆パワハラと言える言動をすることも多くあります。
心理学ではパッシブアグレッシブ(受動的攻撃性)と言う言葉で表現されています。「傷ついた、傷ついた」と弱者や被害者をよそおい、相手を受け身で攻撃する心理です。
仲間に「急げよ」と言われると、「僕・の・ど・こ・が~お・そ・い・・・の~さ」と、よけいにグズグズした態度をとり、周囲の仲間をさらにイライラさせ、パッシブアグレッシブで周囲の友だちに復讐する子どもがいます。
関西の学校で、ツバを手にこすりつけたり、鼻をほじって、給食を配るので、友だちから「〇〇君の給食は食べたくない」と仲間に言われたことで「クラスメイトからイジメにあった!」と母親から教育委員会に報告がありました。そして、その子の母親は、そんな言動をした子どもの親たちに「ウチの子どもに土下座をして謝れ!」と学校内で怒鳴ったのです。そして、その母親は「給食を配らないで」と言った、子どもたちの家のポストに「お前は人をイジメたのだから、一生、人生は呪われて二度と、はい上がれない」と投函してまわったのです。
現代は教育委員会をはじめ学校も「イジメ」と聞くと、ある種の過剰アレルギーがあり、先生たちは、その事件以来、その生徒に気をつかって当たり前のことも注意ができない状態が続きました。それをイジメにあったと訴える当人は、やはり鼻の穴をいじりながら「先生や、大人なんてチョロいよ」と友だちに自慢気に話をする始末。
だから、周囲の父母は触らぬ神に祟りなしと「あまりあの子には関わらないで」と、よけいに地域周辺から孤立してしまう結果になる。
もちろん、ハラスメントで、人に迷惑をかけ、人を傷つけても平気な人もたくさんいます。でも、一方で傷つかない強い人格を作ることも、学校や家族の急務なのではないでしょうか。
最初に書いた少年や、本当にヒドイ、イジメの屈辱に耐えかねて「死」を選ぶこともあるのかもしれません。でも、長い人生は、いつも思うようにならないことの連続です。その曇りの中にも、垣間見る笑える日もあるのです。また、自分にふりかかった濡れ衣に最後まで抗議し、勝利した時に、自分の人生を切り拓いているという自負心、自己信頼感も味わえるのではないでしょうか。
だからこそ、死をすぐに選ぶのは、生きたくても生きられなかった人への「生」への冒とくのような気がして、僕はノーコメントになってしまう。
「君、死にたもうことなかれ」