やさしい嘘 PartⅠ

      2019/04/21

 こんな話を聞いたことがある。昔はたくさんの子供がいたから、兄弟喧嘩はよくあった。でも、彼の兄弟は老人になった今でも仲が良そうだ。

 その男性が幼い時父に、こっそり呼び出されて、かき氷を食べに行った。

 その時に言われた「父さんはお前が一番可愛いんだぞ。他の子達はワガママでいかん。お前は一番父さんに似ている。だから、父さんは、お前が可愛いのだ。下の子達は父さん似てないから可哀想うだ。だから、お前が皆を可愛がってくれるから父さんは心強い」彼はそうか、下の子達は可哀想なのだと思って兄弟達を大切にしようと思ったそうだ。
 そして、続けて父はこう言った「こうやって、かき氷を食べたことは、他のちび達には内緒だぞ。あいつらは可哀想な奴らなんだから••••」と。

 年月が過ぎて、その男性の父が亡くなった。父の法要のある時に「悪いが父さんは俺を一番愛していてくれた」と、その男性が告白した。

 すると、他の兄弟達も「俺が一番さ」「私が、父のお気に入りだったんだ」と•••••皆が、それぞれに父とかき氷を食べたエピソードを口々に告白した。皆が隠していたのだ。そして、その時の父との会話が、それぞれが、おおよそ同じ内容だったそうだ。

 「父さんは偉い!」と結論になり、仲の良い兄弟は笑い合ったという。

 それは、皆それぞれが「愛された」という思いから愛情欠乏に落ちいらずに、兄弟同士で妬みも嫉妬もなく、今まで仲よく過ごして来たのだ。だから、俺たち兄弟は、ケンカもなく、幼い時は助け合って微笑ましい思い出ばかりだと••••

 「父は頭がいいね~」と皆で納得した。

 僕は父に殴られて、すごい言葉を投げかけられたこともある••••過去の遠い記憶だ。でも、僕は、父を心からキライになれなかった。

 十数年ぶりに会った実母が「あのお父さんは、大変だったね」と僕が久しぶりの再会の緊張を和ませるためにした質問に。

 母は「それは、違う。あの人は悪い人じゃない。お前のお父さんは優しい人よ•••お前が赤ちゃんの時に、お前はお父さんにオシッコをかけたのよ。でも、『このおチビは元気がある』と笑っていたのよ。」と語ってくれた。

 それ以来、僕には、そのシーンがあり有りと浮かぶようになった。もちろん、僕のアタマの中には、そんな記憶はないのです。でも、それが僕の新たな記憶として書き込まれたのです。

 今さら、それが真実であるか、嘘であるかは問題ではない。僕の記憶になっている。

日本メンタルヘルス協会:衛藤信之のつぶやき
 幼い記憶は、誰もが語られたストーリーの中から創られるのだと思う。

 だから、離婚することは避けられないのかもしれない。でも、ストーリーの持つ癒しのパワーを、別れようとする二人には大切にして欲しいのです。

 そう、「お前は、誰よりも愛された」のだと•••••
虹






  ・・・ to be continued ・・・




衛藤先生の話を直接聞きたい方は メモ

お問い合わせは日本メンタルヘルス協会まで

 - ブログ

>