あなたの姿勢に気をつけて(姿勢セラピー)
カウンセリングに来られる落ち込んでいる人は、姿勢が往々にして閉じています。
胸襟を開く(心の中に思っていることをすっかり打ち明けること)と言われますが、カウンセリングは心の中にある気持ちを打ち明けてくれないと成り立たないのです。
ですから、どうも心と体には密接なつながりがあるようです。禅の世界では心身一如(心と体は一つである)とか、ヨガはサンスクリット語で「結びつける」という意味が隠されています。そう心と体は切っても切れない関係性があるようです。
心の言葉には「胸」という文字がよく登場します。
⚪︎胸に一物(心中、ひそかにたくらみを持つこと)
⚪︎胸が躍る(期待や興奮で心が弾む)
⚪︎胸を打つ(強く感動させる)
⚪︎胸が痛む(良心がとがめる)
⚪︎胸を撫で下ろす(心がホッとする)
⚪︎胸に手を当てる(心を見つめ直す)
胸について考えれば、皆さんも思いつくのではないでしょうか?
だから、悩んでいる時の自分の姿勢を意識してみてください。
心からアプローチして、間違った行動を変えるのが心理セラピーですが、姿勢から心へのアプローチを姿勢セラピーと呼んでもいいのです。
「いつも自分のことを、誰もわかってくれない…」と下をうつむいている相談者と会話していると、声が聴き取りにくいし、うつむき気味に上目づかいで話されると子どもが親に言い訳している時代を思い起こして、相談者自身が自分をよけいに頼りない存在に感じてしまいます。
だから、僕は相談者に対して、声が聞き取りにくいので「もう少し大きな声で話していただけませんか。後でカウンセリングで話されたことをまとめるのですが、聴き取りにくくって…」
「姿勢が下を向いているから声が出ないのですよ。椅子に深く座って、胸を張って、少し上を見る感じで話していただけませんか?そうすると大きな声が出ますから。そして、大きな声で『自分のことを誰もわかってくれないようで…』と叫ぶつもりで声を出していただけませんか?」
すると相談者が笑ってセリフが言えなくなることがあります。「自分のことを誰も!分かって…ハハァ ハハハハァ、先生、なんだか、おかしいですね。こんなことを気にしているなんて」と。
そうなんです。自分の悩みを大きな声を出して話してみると「どうでもよい」ことに思えてくる。これが行動療法なんです。
弱気な人が高い靴を履き、そして、サングラスをつけるとチョッと強くなったように思ったり、女性が着物を着ると、おしとやかな気持ちになったり、コスプレで変装をすると大胆になってカメラを向けられるとポーズをとったり、上目づかいで話しているうちに、何だか自分が頼りない気持ちになったりするのは行動療法です。行動から心へのアプローチです。
ですから、コロナの時代に家で下を向いて背中を丸めていると、ウイルスよりも心が滅入ります。今日から姿勢セラピーで、少し歩き方、姿勢、目線、声の大きさを変えてみましょう。そうすると、心は、少し梅雨があけた気持ちになるでしょう。
だから、背中を思いっきり伸ばして、大きな声で、上を向き、そして、声のボリュームを少しあげて、明日からの日常を心がけてみてください!