桃の節句の思い出…

   

桃の花

 桃の節句です。

 幼い頃、妹の豪華な7段飾りの雛人形。それが日本の美しさと豪華さを教えてくれました。
 幾重にも色を重ねた菱餅も、煌びやかな飾りは男の子の目にも美しく艶やかに映った。
 幼かった妹は、それら豪華な雛人形が与えられたことを喜んだのだろうか…

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 僕もすでに人の親になって分かる、ほぼ親の自己満足。もちろん、両親が娘の健やか成長を願ったものであったことには間違いがない。どちらにしても我が家にとっては幸せな時代でした。

 その後、両親の離婚やいろんな大人たちの人生の荒波に、僕たち兄妹は流されることになる。でもあの頃、衛藤家では穏やかな時が、たしかに流れていました。

 その後、雛人形は、僕たち家族のように何度かの引っ越しで失われて行きました。何番目の継母かすら分からないけれど、最後の雛人形が無造作にゴミとして捨てられているのを見て「これ捨てるの?」と僕は尋ねた。過去の優しかった時間と、あの頃の家族が捨てられてしまうような気がして…「そうよ、すべて揃っていないのだから!」その人の言ったセリフは至極まともだ。そう僕たちには揃っていなかった…「そう…そうだね」と僕は答えた気がする。それは歯向かうことも、文句を言うことも出来ないくらいに大人たちが正しくて、大きく見えた時代のことだ。それが夢だったか、現実だったかも分からないくらい、昔のこと…

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 その継母は何も悪気はなかった。僕も「心が傷つく」ということも知らなかった幼い頃。「揃っていない」と、言葉を発する側にも罪がない。それが言葉の持っている性質だ。だから言葉は変形する。それを受け取った言葉の淋しさを上手く表現出来ないくらいに幼かった僕。だから、僕は言葉や表現することを武器にしたのだと思う。

 あの雛人形は、どこに行ったのだろう? 夢の島。 過去の写真の中に家族の思い出と一緒に…どこかに住んでいるのかなぁ。

 その妹も素敵な人と結婚し、季節になると「ひろこ米」(妹が作るお米の名前)を送ってくる。僕は心から祈っています。あの妹の幸せが続くことを…

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 先日、ある家に遊びに行った時に、質素な陶器の雛人形が飾られていた。お姫様とお殿様…とても素朴で可愛かった…手に取ると温もりすら感じた。そう、その家族の温もりが。 大切なのは、豪華さでも、リッチな生活レベルではなく、誰もが笑顔で過ごすことだ。

 そう願わくば永遠に… 皆さん、健やかで!

 

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