新社会人の君たちへ
2019/04/21
東進ハイスクールの講師・林修氏が「友だちが少ないのが、僕は自慢です」と語った。
林先生の意見はこうだ「本当に気の合う、価値観が近い人は、そんなに沢山いるわけがない。とすると、友だちが多いのは、それだけ誰かに合わせている時間が増えていることになる。逆に、気の合う友だちがいたとすると、やはり楽しいので、同じ仲間と同じ店で、同じ話をし始めたら、それは人生の限られた時間がダラダラとムダになるのだ」と…
気の合う人間とは同じ話しをする傾向がある。例えば「高校野球の話で盛り上がる友人なら『あの甲子園なぁ』『あのピッチャーなぁ』と毎回集まると、こんな話しがループする。『この話、38年目だろうよ』と僕は思う。ならば一回くらい減らしても人生に影響はないじゃないか」と…
大切なことは、なるべく違う発想、違う価値観に出会うことなのに、いつも同じメンバーとLINEでつながって、同じようなInstagramを見ている。
そういった居心地のいい仲間を、非常に見つけやすい時代になってしまったなぁ、と心配になってしまうと林 修氏は言うのだ。
また、彼は続けた「世の中って好きな人もいれば、嫌なヤツもいて、そんなに人生はもともとが思い通りにならないものなんですよ、でもそんなイヤな奴と、ぶつかり合う中で、人間は成長していけたのですよ、人はね。
今は、とにかく『傷つけられたくない人』が増えている。すると、自分を傷つけない人と一緒にいて、居心地のいい仲間をいつも探すことになる。
そんな人が、現実にいなければ、ネットの中に探しに行く時代になっている。
そして、いつも同じことに興味があって『おまえ、すごいなぁ💕』『いや、そうかなぁ💕』て、ホメ合って、居心地の良い、ぬるま湯に入って、ズーッと仮想の世界で過ごせるんですよ。そんな仲間といる時間が、人間の能力を開花させる時間を奪い、進化が止まることになる。今はね、チョットでも何か言われると『スゴくヒドい💦ことを言われた、アイツ俺たちのコトを認めていないから許せない💢』となる。
若い人と付き合っていると、どうも人とぶつかり合って、自分を高めていく気概がないんですよね。イヤなことを言う人に、僕自身は、ぶつかって行けと言いたくなる。『死ぬような失恋を5回くらい経験しないと人生は語れないのになぁ〜』と…。
この林先生の意見に、僕はまったく共感します。多くの経営者、成功した人たちと会っていて僕も感じることは、成功者や一流の人たちは楽しいことだけをやってきた人びとではない。
今は、自己啓発セミナーでも「自分のやりたいことをやればいい」「嫌なコトをしないで、心のおもむくままに生きれば、世界は味方になる」と「好きに生きていいんだよ」と経験の乏しい人々を先導していることに、僕はどこか違和感を覚える。
僕はまったくそう思わない。皆がやりたい放題を生きれば、世界はワガママな社会になってしまいます。
転職サイトも「君が求めている方向へ」「やりがいも大切だけど、今よりも条件の良い会社」これを見ていると、ますます日本は世界から「過去の栄光にしがみついている国」に落ちてゆく。
成長するということ、それは、子どもから青年期へ移行することであり、その時期の特徴を、E.H.エリクソンは自己の分解掃除だと語りました。自己中心(わがまま)が壊れ、自分をもう一度、自分で組み上げて行くことが大切だと言っています。
大人として大切なことは、思うようにならない現実に対して、耐性(苦しみに耐える能力)を身につけることにほかならないのです。「心理的サバイバル能力を身につけることが大切だ!」と、僕も教室でやりにくい人達とのコミュニケーショを教えています。
なぜならば、思うようにならない時が、人間は一番、成長するタイミングだから。
イヤなことから逃げていると、心理的成長は止まります。仲良しの仲間としか一緒に過ごせなくなり、新しい出会いに対して磨かれる斬新なアイデアも生まれなくなってしまうのです。
日本が誇る心理セラピー「森田療法」の森田正馬が言う「あるがまま」のススメは「自分の思ったように好きに生きろ」と言っているのではなく「周囲の視線や評価を、過敏に気にすることなく、他の人の迷惑にならないように、好きに生きたらいいよ」と教えているのです。そこで、大切なことは「自分の自由が、誰かの自由を妨げる」のであれば、それは自己中心性で子どもと同じなのです。
僕たちは「わがまま」と「あるがまま」を、はき違えてはいけない。
「自分のしたいコトをして、それが周りからも感謝されること」それがアブラハム・マズローの自己実現であり、それが正しい生きかたなのです。だから、自分の成功だけを求めて、それで人が苦しんでいる「勝ち組」は、自己実現というよりも、幼児性の実現で「わがまま」なのです。
孔子の言った「己の欲することに従えども矩(のり)をこえず」とは、立派な人というのは、人の幸せになることが、自分のしたいことに重なる生きかただと言いました。
真の成功者とは、自分がやっていることが、人に喜ばれ、自分も心からそれを楽しめる。それは、苦しみも含んで楽しんでいられることが真の成功者です。
あなたはイヤな人と、苦手な人と一緒にいて、仕事ができますか?
そして協力し、その力を社会に、幸せを還元できますか?
新入社員が街に目立つ季節です。
仕事は「仕える事」なのです。好きな人には、仕えることが出来ますか?
では、嫌いな人には、仕えられないですか?
誰とでも、つき合える能力が「大人力」になるのです。