自信がない⁈ じゃ、ヨカッた!
2019/04/21
僕は「君が話すのに、自信がないなら好都合だ!うまくなるよ!」と応えています。
言われた相手は「???…」となりますが(笑)
メンタルの講師陣たちも含めて、人前で話をしている人は、自信などないのです。だから、日夜どうすれば、むずかしい心の世界を、分かりやすく話せるかを、いつも考えて努力を続けています。
「上手く」話せることくらいなら、僕は、誰でも練習すればなんとかなると思っています。メンタルから独立し、現在、活躍している上村先生も、林先生も、最初は人前で話すたびに震えていました。そして、話すことに慣れると、誰もが話すことに「上手に」なります。
ただ「上手く」と「巧く」とは違います。
「巧く」話すには日々の努力と研究が必要なのです。これは僕も続けています。
ここで、僕がいう「努力」や「研究」は、本を読みあさることや、新しい勉強会に行くことではありません。
「研究」とは、話せるようになると、その話す流れを崩し、もう一度、原点にもどったりします。自分の中にある「自信を、逆に疑ってみる」その「努力」を続けます。
よく「自信をもて!」と人は言います。でも、僕は、自信がないほうが、人生は長い目で見ると、成功すると思っています。
美容室でも、自分は「すごいんだ、自信がある!」と思って、お店を飛び出し独立すると、そこから落ちぶれて行くケースが多いと、有名美容室のオーナーから聞いたことがあります。
なぜなら、他の仲間との切磋琢磨が生まれず、技術が進化しないからです。
講師にも、同じことが言えます。
自分独りだと、比べる相手がいないので、一度成功した講義のパターンに安心してしまい、それをくり返すからです。
だから、なんでもライバルが必要なのです。
もともと人は、自信がないから研究し、足らなさを知っているから、それを埋めるための努力をし続けるのです。
間違ってはいけないのは、人は自信があるから、努力するのではなく、自信がないから、不安になり、日々努力を続けられるのです。
そして、努力を続けた結果、なにかの仕事や活動を、やりとげた人を、周囲が見て「あの人は自信のある人だ!」と評価するのです。外が評価するのが「自信」であって、自分は「自信に満ちている」と思った瞬間から、その人はダメになります。
自信喪失をする人も、自信があるから喪失するので、もともと、自信がなければ喪失にはなりません。もともと、自信など最初からないのですから…(笑)
ボクサーもプロレスラーも、もともとは病弱だったり、イジメにあった子ども時代の経験を持つ、アスリートが多いのです。怖いからこそ、自分を追い込んで、負けたくないから身体を鍛え続けるのです。
英国の歴史学者のC・ノースコート・ パーキンソンが語った「パーキンソンの法則」というものがあります。
リアル・ハートンは、その法則を戦史に適用して、このような事を言っています。
「どの国の陸海空軍でも、庁舎が立派な建物になり、軍人が社会のエリートになると、その後の戦争で、勝利することはできなくなる」と言った内容です。
七つの海を支配した英国海軍は世界のエリート海軍と呼ばれました。
でも実際は、初期のキャプテン・ドレイク時代には、英国海軍は、海賊となんら変わりはなかったのです。
英国海軍が一番強かった時代は、エリートの精鋭海軍ではなく、荒くれで、海の上でしか生きられない猛者たちの集合メンバーだったのです。
それが、世界の大航海時代を作り、英国海軍の輝かしい勝利の歴史を作りました。
英国海軍は有名になり、世界の中で最高の軍事施設と海軍庁舎を作りました。その後19世紀頃には、英国海軍の勝利は一度もなくなりました。
最後には、ドイツ軍の砲撃の正確さの前に、戦わないで軍人施設に逃げ込む始末でした。
彼らはドイツ軍の砲撃に負けたのではなく、自惚れに敗退したのです。
明治の日本海軍も、小国島国の、ただただ船乗りの寄せ集め。だからこそ、清やロシアなどの大国と戦争で、日本海軍は死にものぐるいで戦いました。
当時、日本中が恐怖におびえていました。その不安は日本海軍にもありました。
政治家も、不安だから良いかたちで早く戦争を終わらせたかったのです。
ですから、早期に交渉し、勝利というかたちで終戦をむかえたのです。
当時、日本中の人びとが精一杯に、手をうてることを皆でやりました。
不安と自信のなさから、祖国の存亡をかけて誰もが不安と戦ったのです。その結果として日清戦争も日露戦争も、日本は勝利したのです。
戦史の中では、戦力や装備に劣っている弱小集団が、大軍のエリート集団を打ち負かした事例は数々あります。
それは、自信がなかったから、素人集団は傲慢にならず、すべてに一生懸命で、何事にも手を抜かず、相手を研究して、全員で真剣に戦ったからです。
逆に、第二次世界大戦では、自信を持ったエリート意識の軍人たちが、ミッドウェー海戦では、ありとあらゆる判断ミスをくり返し、大きな敗北を日本海軍は喫しました。
また、日本全体が自信を持ち過ぎて「日本が負けるわけがない」と信じて疑わなかったのです。ですから、大本営発表の「皇軍、行くところ敵なし」「またもや勝利がつづく!」の根も葉もない嘘の報道を完全に大衆は信じこんだのです。そして、日本は、その結末として原爆投下まで敗戦への道を、ひた走るという悲劇につながります。
英雄と言われる坂本龍馬も、黒船を見た時に、オシッコをチビるくらいに怖かったそうです。
「こんなのを作る国と、戦こうたら日本は負けるぜよ~」その恐怖が、龍馬を明治政府が成立するギリギリまで、ガムシャラに走らせました。
日本のテレビ局も、近代化の進んだビルに移った後のテレビ番組は、急激に視聴率が取れなくなりました。韓国のテレビ局は低予算で、テレビを制作しています。でも、韓流ドラマの人気は衰えません。
こんな過信にまつわるエピソードは、現代の日本社会では、数々あげることができます。もう、すでに日本人の集合無意識では、間違った方向に舵を取りつつあります。
今の時代は、子ども達に自信を持たそうとします。「自信がないことは良くないことだ」と教えています。
だから、カウンセリングに来られる多くの人が「自信がない」となげくのです。
でも、人は自信がないから、あれこれ試行錯誤をくり返し、自分の足らなさに不安を感じ、弱点を克服するために、また、研究を続けるのです。
そうやって、努力した学者や成功者たちを、他者が見て「彼は、彼女は自信がある人生だった!」と、その人の偉大さを讃え評価するのです。
ですから「自信は大敵」です。
経営者も自信を持ち、テレビに出演する頃になると、業績は確実に悪化します。
成功してる時期というのは、自社に対するサービスや商品に自信がなく、つねにサービスに対して改革を行って、商品レベルをより高いものに目指している期間を言うのです。
だから、経営者が自信を持った時、組織の動きは止まります。
使えない社員は、自分に自信があり過ぎて、自分を認めてくれない上司や同僚につねに怒りを感じている社員です。
さらに、怒りの時間を一日の大半に費やしている社員は、会社にとっては、お荷物の社員と呼ばれます。
それとは反対に、伸びる社員は、自分は、この不景気の中で仕事があることに感謝し、自分自身の会社に対する貢献の少なさに、いつも自信がなく、なにか、もっと会社に貢献できることはないかと研究と努力を続ける人です。
そのようなスタッフがたくさんいる会社は、業績が伸び続けている会社です。
このような視点を持つと、どの時代でも、出世する人と言うのは、おかしな自信がなく、だから努力をして、いつも時代のトレンドを知りたいと願って、決して過去の成功に対して、傲慢にならず、つねに創意工夫をし、前進していく人という特徴を持っています。
そのような社員数に比例して、組織は成長し、より強くなるのです。
これは組織だけではなく、国も同じことが言えるのです。
僕たち日本は、今、政府もマスメディアも、人びとに「国家の自信」を持たそうと努力しているようです。
でも、一度しっかりと、日本は多くのアジア勢に「もうすでに、遅れをとっているのだ」と現実を認識して、ある種の不安と恐怖を味方につけてからでないと、本当の国の蘇生はできないと僕は考えています。
ややもすると、自信のなさが反動形成になって、日本人は過大な過信に突き動かされ、国家や人びとも、間違った舵取りをしてしまいそうな気配を感じて、僕は心配なのです。
ですから、僕の答えは「自信がない⁈ じゃ、ヨカッた!」となるのです。