自己肯定感とナルシシズム
2019/04/21
先日、僕と仲の良い友が、ある友達から「『自己肯定感の上げ方』について仲間達と意見交換したときに、『自分との小さな約束をコツコツ守る』『現状の自分を受け入れる』『自信がない人ほど、他人の評価で判断する』などの意見が出た」と聞いたそうです。「心理カウンセラーとして衛藤先生はどう思われますか?」と僕は質問を受けました。その前の日には体験セミナーで「セルフイメージをあげる、自己肯定感を高める為には?」の質問が、質問用紙に書かれていました。
このような同じ質問が重複する時には、ユングの言う「シンクロニシティ(意味ある偶然)」だと思って僕なりの考えを述べようと思う。
最近はコーチングなり、NLP(神経言語プログラミング)が流行っているので、自己肯定感とか、セルフイメージ、過去の自分を完了させるなどの言葉がネット上で飛び交う。
ただ、危険なのは自己肯定感は、必ず、他者評価とセットなのです。だから、セミナーに参加して「あなたは、あなたのままで良いの!」と言われると「そうなんだ✨✨」と救われ、納得することもあると思う。
でも、それはナルシシズムに留まってしまう危険性もはらんでいます。やはり他者から嫌われる言動、本人の態度などにも、なんらかの問題があって周囲から否定されている可能性もあるなら、他者の意見も考慮しないと本人の成長につながらないことも多々あります。
もちろん、その他者からの評価も、その人の人間関係が狭く、限定された範囲(高望みする両親や身勝手な上司)だと、その周囲の評価自体が、歪んでいる場合があります。ですから、バイアスのある評価に偏らない為にも、人間関係の広がりは、とても重要になります。
今までの人生の中で、狭く限られた人たちの評価なら、吟味して、再検討する必要がありますが、ただ、僕が心配するのは、部屋の中にいて、本を読んだだけで、「自己肯定感を持ちたい」はムシが良すぎると思っているし、本だけで自己肯定感を得られる可能性は、限りなく低いように思っています。ですから、何もしないで部屋の中で「自分は価値があるの✨」「自分は天才だ!」と思っているだけならナルシシズムで終わります。
人への貢献と言われると『あなたのアピールポイントは何?』『あなたの売りは何?』『あなただけが周囲に提供が出来て、あなたしか出来ないことは何?』とコンサルティングやコーチングでは、そうなってしまいます。
そうするとコンサルティングやコーチングを受けた人の中からは「アピールポイントも持っていない」「私には個性がない」と落ち込む人が、また、続出します。
努力しないで自己肯定感を得ようとすることもおかしいけれど、人から賞賛してもらうための高いアピールポイントがなければ、人生に意味がないという自己否定も、やはり問題が大いにあります。
心理学では「自己評価が低い(自信がない)人間ほど、高い目標設定に憧れる」と言われています。
僕は「The best.」でなく「My best.」が大切だと思っています。では、「Mybest.」とは、何か?
つたない例えで言えば、人が道に迷っていたら、道を教えに行くでも良いし、電車で席をゆずるでも、子どもが泣いていたら「どうしたの?」と声をかけるのでも良い。
往々にして、高い目標をかかげている人に限って、笑顔もなく、コンビニの店員に挨拶もなく、ウェイトレスに水を汲んでもらっても「ありがとう」も言わない人がいます。僕や講師には笑顔で接しても、スタッフには辛らつな態度を取る人がいます。もちろん、こんな人も自分より立場が上の人には笑顔を見せるし、感謝もする。その笑顔も、感謝も、その人に評価されたいからなのです。
その証拠に、相手が挨拶を返してくれないとムッ💢とし、お礼を言っても感謝してもらえないと「もう、あの人には親切にしない!」この言動こそ、人にした優しさは、他者の評価を「欲しがり屋さん」だったのです。
自己肯定感とは、相手、環境、状況に関わらず、自分がしたいから「する」という心意気だと思うのです。それは、周囲に関係なく自分がやりたくてやる。こんな心意気の人は相手、環境、状況に影響されないから、周囲の反応しだいで気分が上がったり、下がったりの感情のダッチロールがない。
それは周囲の評価を求めての、親切や優しさではないから、自然な感じを周囲に与える人です。そんな素朴さを周囲は感じ取り、誰からも「あなたみたいになりたい」「あなたに会うとホッとする」「あなたが私のモデルなの」と他者評価が得られてしまう。そう、得られてしまうのです。
他者の評価などに気にしないから、周囲はその人を高く評価するようになる。
自己肯定感を声高らかに叫ばなくても、周囲から愛されるナチュラルな人になる。そんな自己肯定感がある人は、他者肯定もナチュラルにできる人です。それが世界の中で自己信頼と他者信頼に包まれた安定した生きかたの人だと思っています。
だから、自分をそのように成長し変革する努力は、それなりに必要ではないでしょうか。
自己啓発セミナーに行って、自分で具体的に努力をしないで、仲間から「あなたはあなたでイイの🎉」「あなたで、大丈夫🎉」と賞賛されると、本人は自己愛(ナルシシズム)だけを肥大させ、自己満足に安らぎを感じ、成長しない可能性があります。ナルシシズムと自己肯定感の違いはシッカリと心理学で理解していたいものです。
自己肯定感だけに執着すると裸の王様になり、自分のことを認めてくれる、都合よく自分を褒め、慰めてくれる人達とだけ付き合うことになります。自分のことを理解してくれない人を、全て排除し、誰かに「傷つけられた〜💢」という人が「親が悪い💢」「上司がよくない💢」「あの人が間違っている💢」と、みずからも傷つけた人を攻撃し、今度は毒を周囲に吐く存在に変じてしまう。まさにミイラ取りがミイラになってしまうのです。「毒親なの」と言う人ほど、過去自分を傷つけた誰かを、
攻撃する側にまわって、毒を吐く存在に変わってしまっていることに気づかないのです。強くなるとは、誰かを攻撃することではなく、そのことを気にしなくなることです。
だから、過去の苛立ちを意識しないで、また誰かを認めさせるための、過度な高い目標をかかげないで、今日一日、笑顔で「ありがとう」と、相手の態度や立場にかかわらず伝えて行きましょう!
そう、もちろん「My best.」でね!
追伸、先日名古屋校の基礎心理カウンセラーライセンス授与式がありました。正義で人を責める勉強ではなく、人を許す勉強をしたメンバーです。僕はそう信じています。
次回は、東京校の基礎心理カウンセラーライセンス授与式が、7月29日にあります。