学問という荒野に身を置いて…
2019/04/21
近々日本に大地震が起こると言われています。
昔、小松左京さんの「日本沈没」という衝撃的な本がありました。最後に日本人が難民になり、各国に転々と旅立つ人びとの中に主人公の姿がありました。その時に一番に助けを求めたのは近隣の国のアジアでした。
ただ現代の日本は、アジア諸国との関係は決して良好ではありません。
いざとなればアメリカが助けてくれると思っているから、アジアとの外交関係にそれほど日本は力を注いではこなかったからです。
同じ敗戦国のドイツは自国の予算でアウシュヴィッツを「負の遺産」として管理し、彼らドイツ人自身が、事あるごとに戦争の反省を国際的に表明しています。
だから、ドイツの攻撃によって被害を受けた国がアウシュヴィッツ〇〇像をドンドン建てることはありません。そして、近隣の国からドイツは嫌われてはいません。
日本が唯一、世界に認められて来たのは平和憲法です。
武力による平和解決を永久に求めないと…なぜなら「平和」は立場によって違って来るからです。ある国の平和のために、ある国の平和が攻撃されることもあるからです。だから、僕たち日本人は防衛以外の武力を放棄してきました。これは国際憲章にも合致しています。ですから、世界で幸せな未来を作る美しい憲法だと、人類の平和を願う心ある人々から賞賛されてきたのです。
あの終戦からV字回復した高度経済成長は、朝鮮戦争にも、ベトナム戦争にも加担せず、せっせと未来の幸せを求めた日本人の平和への願いが、そこにあったからです。戦後72年、憲法発布から70年で、今やそれが塗り替えられようとしています。
今回の国難突破解散もフタを開けてみれば、自民党の圧勝になるとの世論調査の結果です。民主党の希望の党への合流は、保守派もリベラル派も合わせて議論のうねりが国に起こるのかと希望を持ちましたが「リベラル派は排除します」との小池さんのかけ声でいっきょに憲法改正へと日本全体は舵(かじ)をきろうとしています。
外交専門家のアメリカの友人が「日本は、なぜそこまでアメリカ政府だけを信じて外交を進めているんだ?俺たちアメリカ人だって、今のアメリカ政府を信じられないと思うし。それに何かあってもアメリカは、自国の利益を考えて、そこまで日本を助けないと思う。だから、外交には、ありとあらゆるオプションを用意しておかなければいけないのに…」
過去の歴史を冷静に見つめれば、人びとの歴史は「正しい方向に向かうか?」と言えば、最悪な方向に舵をきることも歴史上の事実なのです。とくに国が崩壊する前には最悪の選択をしてしまうこともしばしばあります。
「ローマ帝国はゲルマン人(蛮族)によって滅ぼされた」と、世界史で僕は学びました。実際には蛮族がローマ帝国崩壊にやり得たことは、倒れかけの人の背中を軽く押した程度にしか過ぎません。なぜなら末期のローマ帝国は政治の腐敗、民衆は目の前の楽しみにだけ意識をむけて、大衆文化は荒廃しきっていました。
第一次大戦で帝政ロシアのバルチック艦隊を撃破した日本帝国海軍は、第二次世界大戦のミッドウェー海戦では大敗北を喫しました。零戦(飛行機)に積み込むのは、魚雷か爆弾かの指揮権の乱れ、指示伝達のミスなどが幾重にもかさなり、戦艦の数でアメリカを上回る、日本帝国海軍はミッドウェー海戦から敗戦の方向へとなだれ込んで行きました。
アメリカでトランプの大統領当選。日本の安倍首相のトランプ頼みの片寄った外交政策。そして、北朝鮮の動きに大衆の不安が、重なる時期での選挙。さらに野党の混乱。そして、フタを開けてみれば安倍首相の願った以上の自民圧勝の投票事前調査。
おそらくアメリカに頼り、逆らえない日本は平和憲法改正へと向かうことでしょう。
第二次世界大戦へと日本が、徐々に平和な時代から戦争へと引きずりこまれたように、最悪の時には、日本は最悪の選択をしてしまうものなのでしょうか?
その時にアジア周辺の国々や世界の心ある人々から、日本は「不戦の願い」のリーダーシップへの発言権を失ってしまうことになるでしょう。
文明が強大だと、どこから道を誤り始めて、崩壊に向かったのかが分かりにくい。
ローマ帝国滅亡の50年も前から、ローマの滅亡を予告した人がいます。シリアの荒野に住んでいた聖ヒエロニムスです。彼は滅びるローマ帝国を冷静に観察していました。「世界を支配して来た巨大ローマが、今や蛮族に滅ぼされようとしている、それは剣ではなく心の崩壊だ…」
僕もヒエロニムスのように、大衆心理学という観点から、個人、個人が集団に巻き込まれてしまう危険性を、心理カウンセラーという立場(荒野)に身を置いて、時代の流れや、人々の愚かさを冷静に見守りたいと思っています。
僕たち日本人は、どこに向かうのでしょう…