心の「HOME」

   

  

 人に愛されると幸せになります。

 でも「愛されなければ価値がない」とまで思い込むと、相手の表情一つですぐに不安になります。

 恋人の態度、仲間の表情に敏感な人は「誰かが笑っていない」と恐ろしいほどに不安になります。

 それは相手の態度に、自分の存在価値を頼っているからです。

 おそらく幼い時に、何もなくても愛された子どもと、親が望む態度の時にだけ愛された子どもでは、後者は親の顔色の変化に敏感になります。

  

  

 誰かがニッコリしなかっただけで「自分が嫌いだから…」となる人がいます。「自分が邪魔だ」と落ち込む人がいます。

 小さい頃に「自分なんていないほうがいいんだ」と感じてしまった人生は生きづらいです。

 この顔色に敏感な人たちは、誰かの顔色という現実に落ち込んだのではなく「自分が必要とされていない」と深刻な無意識にある「のけ者感覚」がズキズキと反応して心を痛めているのです。

 これが恋人だと、不安から愛情確認がしつこくなります。

 不安感から、「見捨てられないか」「愛が存続しているか」の保証をいつも相手に求めずにはいられません。

 相手がいつも自分を中心に置き、優しい言葉を語ってくれないと自分のなかの不安感が止まらないのです。だから、愛の保証が得られるまで、愛情確認が、パートナーの顔色にまで及びます。

  

 

 でも相手も人間だから、その時の気分や顔色は、相手の領域なのです(離別感)。

 でも相手のちょっとした表情の変化は、「自分が愛されていないのではないか」と不安を刺激し、愛情確認がしつこくなります。やがてパートナーも根をあげ、自己成就的予言どおりに愛の関係が壊れてしまいます。

 しつこさは不安なのです。

 不安だから相手の声の調子で「関係が終わってしまう」まで極端に不安予測してしまいます。

 それは現実ではなく、それだけ自分の中に「必要とされていないのではないか…」という心の中の除け者感覚が投影されているだけなのです。

 一時、話題になったHSPという心が敏感体質の人も、双極性障害で、誰かの役に立てば元気になり、軽く扱われるとガクッと必要以上に落ち込む人も、やはり深刻な「自分は役に立たないのでは?」「相手は不快なのでは?」と周囲の顔色に過剰に、敏感に反応します。

  

 カウンセリングの現場でも、「衛藤先生は大丈夫ですか?」「何か疲れていますか?」「何かありましたか?」。

 恐らくは僕がいつものように笑っていなくて、少し考えごとをしていても、うつ病の人は過度に気づかってくださいます。

 僕はそんな時には、

「気にしてくれるのはありがたいけど、いいかい僕の顔色は、君のせいでもないし、ただ考えごとをしているだけだからね、君は君でいることを楽しんで大丈夫だよ。ありがとう」

 と僕は伝えることにしています。

 あなたが自分は邪魔者ではないかと落ち込む時には考えてほしい。

 

 「自分が不安に感じるほどに、現実に起きていることは深刻ではない」ということを…

 

 大切なことは、人からどう扱われるかで自分の価値を置くのではなく、自分で自分の心地よい居場所を自分で作ること。

 

 心理的に健康な人は、「帰るべき自分」を持っています。だから、僕の教室では自分の居場所を作り、そこに帰ることを学ぶのです。

 

 ですから、ひすいこたろう君と卒業生たちが中心になって作ってくれた教材のタイトルが「HOME」なのです。

 

  

  

  

  

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心理カウンセラー衛藤信之
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