生まれてきたからには…

   

 

 何かを成し遂げようとする時には、人間の熱量というものは大切だと思っています。

 前回、僕は映画『ゴジラ』を取り上げました。あの映画で一番感動したのは人々の「力の結束」でした。最新鋭の兵器でも大国アメリカでもなく、人々の協力と知恵でゴジラと戦うところに僕は感動を覚えたのです。

 やはり僕も昭和生まれの人間です。昭和の時代の熱量も知っています。僕の父親は70年の大阪万博に建築で携わりました。日本を世界に負けない国にしたいという気運が日本全体にありました。現代は何かをする時に前に進もうとする力より、後ろに後退させる力が強いような気がします。結果どちらにも中途半端になる。

 高度経済成長期の熱さを知っている政治家や財界人たちは「あの頃の日本の勢いをもう一度」と東京オリンピックと大阪万博を打ち出しました。でも時代は変わっていました。「勢いのある頃の日本」と「バブル崩壊後の日本」ではブレーキの力があまりにも強いのです。

 復興の時代の象徴として建てられた東京タワーに負けない電波塔として建造された東京スカイツリーは、大幅にコストを下げてヒョロ長くなりました。その後も東京オリンピックも予算オーバーの問題から未来を目指した宇宙船のような新国立競技場から、木で作った現代の新国立競技場に収容人数も規模も縮小しました。

 デザインは変えないで予算を縮小する方法はあったのに、ザハ・ハディド案は取り上げられることもなく、安倍首相の一言で白紙撤回されました。こうなっていたかもしれないのが次の映像です。→https://vimeo.com/137299144

 オリンピック後に、観光資源になるような含み資産も大切だと感じています。新国立競技場が海外の観光客を惹きつけている話題も聞きません。

 今回の大阪万博も予算の問題でコスト削減が求められています。もちろん、国の税金、地方の税金が使われるわけですからムダに使ってほしくはありません。ただ、何かをしようとする時に、後ろ向きな逆風を考えると、何もかも中途半端になるのだということです。今は円が弱くなり、海外から来る人たちにとって日本は買い物天国です。ですから、インバウンドで海外からくる旅行者も増大しています。

 また東京駅でも、これほど建築費を減らし日本人でも迷ってしまうであろう複雑な駅構内になってしまいました。“おもてなし“ で始まったオリンピックまでに間に合わせた東京駅は、世界から見ると「不親切だなぁ」という印象しか旅行者に与えないのです。 

 何かにストップをかけるなら、スタートする時にストップをかけることが大切です。ただ、もうやると決まったら「世界の人が感動する」ような何かを作ろうというのが日本の「心意気」、モノづくりの「粋」だと僕は感じています。

 成功するために「じゃあ僕たちは何ができるだろうか!」の前向きな議論が大切だと思います。

 今回は僕は不満を伝えているのではなく、人生も同じで、「生まれてきたからには楽しく生きる方法」を考えませんか?それを一番に言いたかったのです。

 最近の議論の多くは、生まれてきた後になって、「生まれてきた意味があるのか」に偏っている気がしてなりません。

 多くの若者の深層心理にある「未来を生きること」へのブレーキが強すぎるのも、一般大衆のブレーキ精神も、「合わせ鏡」になって日本の国力を世界から落としている気がしてならないのです。

 


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心理カウンセラー衛藤信之
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